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「香澄」
私は声のする方へ振り向くと、背後に恭太が立っていた。恭太は私を見つめて、優しく微笑んだ。
「恭太?…恭太…会いたかったよ…」
私が恭太の胸に飛び込むと、恭太はふふふっと笑って、私の頬を優しく撫でた。それから私を抱きしめてくれた。
「香澄…ありがとうな……」
ハッと目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。瞼が重たくて目が開けにくい。
部屋の中は、テレビの液晶の光でうっすら明るいが、外はすっかり暗くなっていて、時計を見ると八時を過ぎたところだった。いつもなら、恒太に合わせてとっくに寝る支度を済ませている時間だ。
私たちは泣き疲れて、リビングの床に三人並んで眠ってしまっていたようだ。
私は恭太の遺影を穏やかな気持ちで眺めた。
なんてリアルな夢だっただろう。恭太の温もりと、抱きしめられた感触がまだ体に残っているようだった。
「会いに来てくれたんだね…」
これまでは、恭太の悲しい夢しか見ていなかった。こんな心地よい夢は初めてだった。
私は夢の余韻に浸って、裕太と恒太の可愛い寝顔を見つめた。二人の寝顔は、少し微笑みを浮かべているように見えた。
「あなたたちの所にも、会いに行っているのかな…」
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