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話は遡り半年前。二次元の話に怯えた無知である千早は、泣きに泣いて死にたいと怯え始めた。
親だと思っていた親が実は親でなかったり、本当の親だと言った親が親を殺す現場を目撃してからは、彼は異常な程兄弟以外の人間を信用出来ず、また精神が一番脆いためすぐに情緒不安定になりリストカットから始まり首を吊ろうとまでする始末だ。否、首を吊るだけならまだいい。最悪の場合躊躇なくナイフを首に宛がうので兄弟は皆彼の事を心配している。何故なら同じ穴の狢だからだ。心を寸前まで殺してしまっている、有名人の子供という不祥事を国は金で解決する。彼らはそんな中巡りあえた数少ない理解者だ。
翼は、そうやって泣きに泣いて救出しにきた同室の東岳に支えられて寝た千早のためを思い、この学園に入学を決めた。否、断じて面白いものが見れると思ったからではない。翼は人生に夢も希望も目標もないので、卑劣なほど面白いものに目がないのだ。
入学式。
翼は慣れないブレザーに身を包み、辺りを伺う。周りの生徒は皆翼の目立たない容姿に眉根を寄せるが、中学時代いじめにあっていた翼にはどうでもいいことだった。そもそも、学校に行かなくなったのもボロボロやずぶ濡れになった制服の替えを用意するのが面倒だっただけだし、医療費も嵩んで面倒だっただけだ。
周りをキョロキョロ見渡すと、お互い遠く離れた所に千早と東岳がいた。千早は東岳とはかなり遠い所にいて、周りの生徒と親しげに話している。東岳も、一人ポツンと佇んでいるが、話しかけられないだけで慕われているようだ。現に、彼の周りには彼の姿を尊敬の眼差しで見ている生徒が何人もいる。
翼はここでふと気づいた。
「(これは、何か意図があって周りに兄弟だってバレないようにしているのでは?)」
翼は地頭はいいため、そう帰結するが、本当は基本単独主義だからであり、二人は同室なので思う存分部屋で兄弟しているだけだからである。
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