赤の他人

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突然だが不景気を乗り越えた日本はある一つの法律を作り上げた。 高所帯児童特例法だ。 その名の通り、高所帯の児童に何らかのトラブルが発生した場合、あらゆる手段を用いて手厚く保護をする法律である。当初、この法律は多くの批判を呼んだが、それはまた別の話である。 例に漏れず翼もその法律の恩威に預かっている。彼の親は有名な資産家だが、妻の遺産目当ての虐殺により二人とも死んでいる。翼はなけなしの知識でありあまる資産を厳重に保管し、今は国が用意した戸籍、八神として暮らしている。つまり、彼は彼である限り国から丁重に持て囃されるし、ありあまる資産で遊び放題と言うわけだ。 そして、そんな人生に夢も希望も目標もなくのうのう暮らしている翼と、何の因果か同じ八神という戸籍を名乗ることとなり、兄弟になることを強いられた男二人、千早と東岳も例に漏れずこの法律の庇護下にある。 千早は子供が出来ないある有名人が、親族から何の報告もせずに軟禁、そして親を名乗られ、そんな日々を3歳から10歳までを過ごし、その事実にようやく嗅ぎ付けた本当の親が偽物の親を殺し、そしてあえなく捕まった。そんな千早は路頭に迷っていたところを、国の勝手な意見で八神の末っ子になることとなった。 東岳は非合法的な行動を取り続けていたヤクザの隠し子で、地下に何年も幽閉され続けてはイカれた部下達の慰め物になったり、たまに処分予定の人間を連れては、部下がやるべきだった拷問を代わりにさせられるなど、異色の経歴を持ち、例に漏れず、摘発されたヤクザから救出された東岳は何の因果か八神になった。 余談だが、彼が生まれた年などの明確な書類が見つかっておらず、推定18歳とされていて、何故千早と同じ学年に通っているのかというと、彼の天才的な頭脳と、異色の経歴を加味した結果、小学校卒業の経歴がなくとも、中学の入学を許可されたためである。 話は変わって春。高校入学の日。翼は金に物を言わせてこの兄弟が通う金持ち学園に入学することになった。
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