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赤の他人
八神翼×千早、東岳、梵佑利
中学三年生の夏だと言うのにベッドにくるまりながらスマホを弄る男が一人。彼の名は八神翼。様々な学校が入り交じる学校特区に住む、名前を書けばとりあえず合格する不良校にていじめにあい、絶賛引きこもり中のろくでなし。
「ふははは、受験なんて知らん。俺は小説を書いて食っていくのだ」
無論、嘘である。
彼が今、目をガンギマリながら弄っているスマホには、彼の愛する"兄弟"がすごく恥ずかしい文体でえっちなことをしている。ポエミーな感じで綴られる文章には、口に出すのも恥ずかしい言葉が羅列されているが、人間には時折有頂天になる瞬間が存在する。今まさに、彼がそうだ。
しかし、彼が弄っていたスマホが突然着信音が鳴り響くと、彼の心は急降下して、文書を羅列していたタブをそっと閉じた。もちろん、保存はしていない。
「やぁ、千早ちゃん。どうしたんだい?お兄ちゃんに何か相談したいことでも出来たのかい?」
『うん…翼……俺、すごく不安で…どうしたらいいのかわかんないんだ…』
「聞かせておくれ」
"兄弟"内のグループ通話には、八神千早の震える声が聞こえる。普段彼は爽やかで恐怖にも立ち向かえる精神力がある好青年だったはずだ。しかし、"家族"である翼の前では、千早はただの千早に過ぎない。
『友達が、来年の春、季節外れの転校生が来るかもしれないって。しかも、その子はアフロでメガネで不潔で、しかも、俺はその子の事好きになって、彼にピ──しようとしてピ──されてあまつさえピ──になるんだって言われて…!』
『は?』
千早の切羽詰まった声に、もう一人別の低い声が混じる。翼と千早の長男である八神東岳だ。
『どういう事?』
「それ多分色々違う」
『は?』
毛食も何もかも違う二人の疑問符が聞こえる。
そんな真夏の出来事だった。
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