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昨晩息子が食べて、机から落ちて一晩中放置されたのだろう。乾燥して反り上がり、四方八方にヘタが広がる様子は小さなクモの足のように見えなくもない。
が、しかしだ。
毒グモを見たら、妻をその場から遠ざけるんじゃないのか!?
俺が守る みたいなのないのか!
私が 刺されたらどうするんだ!
そもそも 新種のクモって、なんだ!
考えればわかるだろうがっ
も……最悪だ!早く私を一人にしてくれ!
最後の1行には、2重で赤線が引いてある。
「……プチトマトのヘタだったわ……」
私が冷静に言うと、夫は何事もなかったかのように
椅子に座って朝ごはんの続きを食べ始めた。
おいおい! 妻に言うことあるだろう!?
ありえないだろう!
なぜ何もなかったことにできる!?
「そもそも この家から港は遠いから、
クモ、来ないよね」
「それは分からん」
私の心のタガが外れる。
謝れよ!!悪かったと!
今すぐ謝れ!朝から 騒いで悪かったと!
「あのさぁ!」
私の怒りのエネルギーを感じとったのだろうか。
話しかけようとしたら 夫は「行ってきます」と、
すぐさま 部屋から出て行った。
むかつくわ!!
1ページ かけてぎっしり書かれたエピソード の最後のセリフまで読んで、当時の自分の強い決意を改めて知る。
夫・誠司の考えは分かった。
私はいざという時、子ども達を守らなければいけない。
何かあったら誠司を 差し出そう。
囮にして、子ども達と逃げよう。
No、2〜3は子供が小さくて一番大変な時だった。
あっという間に毎日が、季節さえ飛ぶように流れていった日々を思い出す。
パラパラめくるが 赤線だらけ 。
これ以上は読むのやめておこう。
絶対に、感動的な夫婦のエピソードは出てこない。
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