月乃の怒り

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   こんな状況、許せるはずがなかった。  私は拳を握りしめ、ぶるぶると震わせながら立ち尽くす。目の前には、目に涙をいっぱい溜めて俯いている同期の由真が座っていた。普段はきっちり結んである髪が、今日は無造作に広がっており、目も腫れぼったくなっている。彼女は無言でデスクに腰かけたまま、呆然としていた。 「なんで由真が……クビなの?」  自分でも驚くほどの低い声が出た。  これほどの怒りを覚えたのは初めてかもしれなかった。一緒にこの職場に入り、仲良くし続けた由真。お互い切磋琢磨し、気が付けば二十九歳を迎えている。どちらかと言えば私は気が強くて男勝り。一方由真はおっとりして可愛らしい感じ。パッと見正反対の私たちだが、とても仲がよかった。  そんな由真が突然、クビ宣告をされた。 「何を言っても駄目なんだな、って……分かった。月乃(つきの)はこれからも頑張ってね。社外でまたご飯でも行こう」  そう悲し気に笑ったが、私は納得など出来ていない。 「部長は何してんの? ちゃんと話したんでしょ!?」 「話したけど……さすがに出来ることがないんだよ。部長も自分の立場があるだろうし」
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