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黙り込んでしまった私をじっと見つめた後、碧人はふ、と顔を緩めた。そして、どんどん顔に笑みが広がっていく。不思議に思い首を傾げると、碧人は恍惚としたように私を眺めている。
「ごめん……こんな時だっていうのに……月乃が、俺の過去に興味を持ってくれたんだ、って思ったら嬉しくなって……月乃が不愉快な顔になればなるほど、喜んでしまう」
「……悪趣味」
「ごめん。でも嬉しい。妬いてくれたんだ? 大丈夫、俺は何があっても月乃しか見えないし、月乃から離れることはないから。そうなるぐらいなら、死ぬ」
「し、死ぬは言いすぎ!」
「死んだ方がいい。絶対に月乃しか見えてないから、月乃は堂々としてればいいんだよ。早く一緒に住もう。まだ結婚してくれない?」
「こんな状況で結婚も何もないでしょう」
呆れてそう答える。母親は大反対だし、他に結婚相手を紹介してくる始末だし。
碧人は大きなため息をつく。
「もう一度、俺から母さんにはキツく言っておくよ。月乃は何も心配しなくていい、俺のそばにいてくれればいい」
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