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「いいえ。今日は碧人を抜きにして、あなたとお話したくて。ちょっとそこの喫茶店に入りませんか」
なんと、私を待っていたらしい。勿論、こんな二人とお茶をするなんてごめんだ。だが、あっちから感じる敵意と見下した視線が私を煽った。
碧人がいない方が、言いたいことが言えるのかもしれない。
私はそう決意し、背筋を伸ばして答えた。
「分かりました、いいですよ。行きましょう」
怖気づかない、負けない。あいにく、私は結構好戦的なタイプだ。碧人を邪険に扱ってきた母親面の女と、やわそうなお嬢様に負けてたまるか。
私たちはそのまま近くの喫茶店に入った。こぢんまりとした静かな喫茶店で、あまり人もいない。一番奥のテーブル席に座り、コーヒーを三つ頼んだ。母親と長坂さんは並んで穏やかに小声で何か会話をしている。仲良しアピールだろうか。
時間を無駄にしたくないので、私はすぐに切り出した。
「それで、何の御用でしょうか?」
「まあ、そんな怖い顔なさらないで……大体想像ついているでしょう?」
碧人のお母さんは意味深に笑うと、隣の長坂さんと目を合わせ、次に私を馬鹿にしたような視線で見た。
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