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目の前に座る長坂さんは、涼しい表情でそれを見ている。綺麗なワンピースを身にまとい、香水なのか甘い香りがした。わずかに口角を上げ、見るからにいいとこのお嬢さんというオーラをまとった彼女は、柔らかな声で切り出した。
「急に訪ねてきて、お時間を取らせて申し訳ありません。それにこんな非常識なお話を……」
「あーいえ、大丈夫です」
「私と碧人さんの関係は、お聞きになりましたか?」
「はい、少し付き合っていた、と伺いました」
私が言うと、彼女は小さく頷いた。
「一年半……ぐらい前でしょうか。私の行きつけのカフェで毎朝、碧人さんと会っていたんです。彼は出勤前にコーヒーを買いに立ち寄っていたんでしょう。一方的に一目ぼれしたのはこちらです。その時は、神園の社長だなんてことは知りませんでした。連絡先を渡して、待ちました」
「長坂さんのお母さんと、碧人のお母さんは知り合いだったんですよね?」
「その通りです。でも、私は碧人さんとの付き合いを母には言ったことがなくて……親は親、私たちは私たちと思っていた節があります」
なんだか話していると、結構まともっぽい人だぞ。私は先を促す。
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