月乃の戦い

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 指輪を贈り、好きだよと愛を囁き、夜も共にしたなら、それが本気じゃないなんて都合がよすぎると思ったのだ。私には未だ手を出してこないくせに。 『ひとつの嘘や隠し事はバレた時に不信感を買う。他のことも嘘なんじゃないかと疑われるし、あとで矛盾も生じる』  いつだったか碧人が言ったセリフだ。  別に初恋だ、なんて、言わなければよかったのに。  駅に着いた頃、スマホが鳴ったので急いで取り出す。碧人からの返信が来たのかと思ったのだ。  だがそこに見た着信相手は、全く違う人だった。 「……なに? 今更」  私の低い声が周りの雑音に混ざって、消えた。
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