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『では、今日の夜、家で待っています。ようやくゆっくり話が出来るようで嬉しいわ』
スマホを覗き込み、文章を確認した後ため息をついてエンジンを掛けた。暗くなってきた道を走らせる。人々が寒そうに歩く街中をすり抜けていく。
「せっかく誘われたのにな」
小さな自分の声が車内に響いた。
月乃から、『仕事が早く上がれそうなら家に行ってもいい?』とラインが来ていた。普段なら二つ返事でいいよと返事をするところだが、今日は先約が入っていた。
母だ。
普段なら、月乃と会えるとなれば飛び上がって喜ぶところで、今日もそうしたかったのは山々だったが、まずは目の前の問題を片付けることが先だと思ったのだ。それで、自分を奮い立たせ月乃からの誘いを断り、実家に車を走らせている。
この状況を何とかしなければならない。
母と月乃と食事をした後から、ずっと連絡は来ていた。『一度話したい』という主旨のものだったが、月乃への暴言が許せなくて無視し続けていた。
そしたら、相手は見合い相手を自宅に連れてくるという暴挙に出てしまった。
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