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付き合ってすぐに、『アクセサリーが欲しい』と言われて、大学時代の苦い思い出が蘇った。
ああ、結局この子もそうだったのか、と。俺が神園の社長だとは知らなかったと言っていたが、きっと嘘だろう。そうげんなりしつつ、面倒だったので『好きなのを買えばいい』といくらか現金をあげたことがあった。結局、あの子はあの金で何を買っていたのか、それすら忘れてしまった。
会うのは月に一度、多くて二度。それ以外の日に連絡はとらないし、会うのも夜で、食事を取ったのも数回。月乃のようにデザートを食べに行きたいだとか、映画を見に行きたいだと言われたこともあったが、気が乗らなくて『仕事が忙しい』で断っていた。向こうもあっさり引き下がった。
やはり、付き合っていると呼んでいいのかどうかも怪しいな。一人苦笑いをする。
それでも向こうは文句を言ってこなかったので、お互い様かと思って関係を断つことはしなかった。二人とも、寂しいときに会える都合のいい人間と思っていた。ただ夜を共にして、『好き?』『可愛い?』としつこく聞かれて『うん』と適当に返し、その場で満足する、たったそれだけの関係だった。
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