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森の風がふわりと彼女の髪を吹き上げる。
なびく姿はまるで踊ってるかのようだった。
あの絵に感じた静けさと、孤独さとは、真逆に。
「お医者さんに言わせると半分は奇跡、半分は必然だって話なんです。」
「必然、ですか。僕はもう全部奇跡だと思いました。」
「当時のことをお話しますが・・私、もともと病弱でして、どうせ長くは生きられないだろう思ってたんです。母も同じように早くに亡くしてましたし、これは運命だろうって。だから20歳までは生きられない、余命はあと半年。そんな宣告を受けても、ああそこまでか、くらいに考えてました。生きることを諦めてたんです。」
「あの絵にはミコさんの心境が現れていて、その深い陰りや儚さが魅力となってたのかもしれませんね。と、すいませんなんだか出過ぎたことを言いました。」
「いえそんな。魅力なんて言われるとお恥ずかしいですが、まぁ、普通ではなかったのは確かですね。けどそんな時、父が『面白い男がいるから会ってみないか』って話をもってきてくて。」
「面白い、ですか。こそばゆいですね。変であることは否定できませんけども。」
「ごめんなさいね。でも本当に・・面白い人、奇特な人だと思いましたよ。半年しか命の無い娘に、1年後まで生きてたら会わせてやるって言われて、素直にハイと言うなんて。どんなお気持ちだったんですか?これは会ったら聞かなきゃって思ってて。」
「そんな改まって言えるほどのことは無いんですが、先ほどのとおり不思議な魅力があって、運命を感じたとでも言いますか。あとはそう、会いたいと思ってしまった。余命半年と聞いたあとでも、きっと会えると思って。・・・いや、会える確証なんて無いのはわかってました。ギリギリで会えたとしても何ができるのか葛藤もありました。けどやはり、それでもあなたに会いたいと思ったんです。これ以上の深い理由はありません。」
「会いたい。ふふ、まさにその気持ちが運命に響いたんですね。」
彼女は伏目がちに照れたような顔で話を続け、
「お医者さんの言う必然というのは、要は生きる気力だったんです。生きようとする強い意志は身体の免疫力や治癒力にも影響する。これは過去の様々な事例からも証明されてるんですって。それで私、あなたが1年後まで待ってくれてると聞いて、それなら生きなきゃって思ったんです。生きてあなたに会いたい、と。そうしたら・・・」
スっと胸に手を当て、一息ついてから言った。
「そうしたら、病気が治っちゃいました。」
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