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くノ一咲耶
「フッフフ、われこそは忍ばない! 甲賀忍者『くノ一探偵』咲耶、見参!」
突然、ボクの目の前に美少女が現われた。
まるでイリュージョンか、魔法みたいだ。
歳の頃は、女子高生くらいだろうか。小学六年生のボクよりも幾分年上だ。
美少女は忍者のコスチュームを着ていた。おかしな格好だ。
「えェ、なにィ忍ばない。甲賀の『くノ一探偵』?」
マジか。ボクは驚きのあまり腰を抜かして椅子から転げ落ちそうになった。
だいたい今は二十一世紀だ。甲賀忍者なんているはずがない。まして、くノ一など漫画やアニメの世界のことだろう。
「フフゥン、よかろう。写楽とか言う不届き者はお前かァ?」
しかし美少女忍者の咲耶はボクを睨みつけ背負っている刀の柄に手を伸ばした。
しかし左手にはライブ配信でもしているのか、自撮り棒で事の成り行きを撮っているようだ。コミカルな姿にボクは笑顔を浮かべた。
「はァ、写楽はボクですけど。断わっておきますけど不届き者ではありませんよ」
なんとか両手を振って否定した。
「問答無用。いざ尋常に勝負しろ」
今にも柄を握り背中の刀を抜きかねない。
「いやいや、問答無用ってなんですか?」
ボクはできるだけ遠ざかった。こんな図書館で刃傷沙汰などゴメンだ。
「……!」
図書館の司書らも目を丸くしあ然としていた。図書館で流血騒ぎなど前代未聞だろう。
なおも咲耶はボクを挑発してきた。
「よかろう、好きなエモノを持って参れ!」
「いやァ好きなエモノなんてありませんよ」
「たわけ者がァ。好きなエモノもなしに、この咲耶に勝負を挑んで来るとはチョコザイなァ!」
「いえいえ、勝負なんか挑んでませんよ」
なんて勝手な解釈をする女子高生なのだろう。
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