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イラスト集の打ち合わせは、新宿にある出版社で問題なく終わった。
吹き抜けの開放的なロビーから外に出ると、強い風が晨の髪を舞い上げる。
「さむっ」
思わず腕を組み、背中を丸める。
普段は背の低さを気にして、背筋を伸ばしているが、寒さにだけはどうしても勝てない。
新宿の人の多さにクラクラしながらも、迷路のような駅構内に入ろうとした時だった。
不意に目に入ってきた光景に、うっかり意識を奪われてしまった。
先日の少女が、先日と同じ服を着て、四十代くらいの男性に笑顔で話しかけている。
二人の声は聞こえないが、笑顔の少女とは裏腹に、怪訝な表情を浮かべる男性の様子を見て、容易に会話を想像できた。
気付けば、晨の足は少女と男性を目指し、勝手に動き始めていた。
見知らぬ少女なんて、放っておけばいい。
自分とは何の関係もない子だし、それどころか、変なことに巻き込まれかねない。
それなのに、自分はなぜ駆け足にも近い歩調で進んでいるのだろうか。
「――簡単だよ。人って、簡単に死ねるんだから」
その言葉が耳に入り、晨は慌てて二人の間に割り込んだ。
「すみません。気にしないでください」
自分の焦った声に隠れていた感情を突き付けられ、唇を噛む。
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