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久しぶりの喪服は少し窮屈で、普段履かないパンプスも足が痛くなってきた。 それは夫の修平(しゅうへい)も同じようで、告別式の会場から出るとすぐにコートの下で引き攣れていたジャケットのボタンを外し、ふぅ…と言いながら歩いている。 なんかこう…私たちも結構いい年齢になってきたね。 そんなことを思いながら横顔を見る。 歩くのがゆっくりになって遅れがちな私に気が付いた。 『ママは足が痛くなってきた? 駅ビルでお昼ご飯食べて休んでから帰ろうか。』 そういえばこういう優しさはいつまでたっても変わらないな。 久しぶりの2人だけのお出かけにちょっと心が弾んでくる。 告別式の後で不謹慎だけれど。 足が痛いのを口実に腕にしがみついた。 『うん!お腹空いたね。 でもさ、そのズボンでご飯食べられる?』 『まだまだ余裕だよ~。』 笑いながら私に合わせてゆっくり歩き、息を吸ってお腹を凹ませてみせた。
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