夫婦ノートに花束を

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『また晴菜を怒らせてしまった。洗濯したのはいいけど、おしゃれ着用洗剤じゃなくて普通の洗剤を使ったから、晴菜のお気に入りワンピースが縮んだ。晴菜が喜ぶかなと思ったのに失敗』   奮発して買ったブランドのワンピースが縮んだことを確か、私は頭ごなしに陽太を怒った気がする。 『食器を洗ってたらお揃いで買ったマグカップを割ってしまった。いま晴菜はベッドで泣いてる』  付き合って初めて買ったおそろいのマグカップで、もう廃盤で買えないと思うと凄く悲しくなって泣いたことがあった。  そのあとも日々の些細な喧嘩について陽太目線の気持ちが綴られている。  私はどんどん読み進めていく。   そしてちょうど一年前の日付に差し掛かって、私のノートを捲る手が止まる。 『俺もついに父親か。晴菜には驚きすぎて、ふぅんといってしまったが、めちゃくちゃ嬉しかった。まだ卵みたいな俺たちの赤ちゃん。元気に育ってほしい』 『晴菜のつわりが酷い。何か作ってあげたいけど、うまく作れない俺に晴菜は毎日イライラしている。明日は休日だからスマホで検索してみよう』  私はだんだん陽太のノートの文字が滲んでいくのが分かった。  次のページを捲るのが怖い。少し震える指先で私は息を止めてページを捲った。
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