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「返事を、したいの」
彩がそう告げると拓が息を呑むのが分かった。彩は頭を下げる。
「ごめんなさい。……他に好きな人がいるの」
「……そいつには好きだって言ったの?」
「……言ってない」
「なら、言ったほうがいいよ。絶対相手も彩の事を思ってるって。俺が保証する」
彩に向ける幼馴染みの笑顔の中には苦しみや葛藤が隠れていた。それでも彩は気づかないふりをして答える。
「ありがとう」
拓にもいい人が見つかるよ、とは酷になると思い、言えなかった。
彩は一つ嘘をついた。『好きな人がいる』こと。
彩の心のなかには何かポッカリとした気持ちがあった。しかし彩はその正体に気付けなかった。それでも、拓のことは運命の人だと思うことは出来なかった。
もっと他に、自分を夢中にさせる誰かがいたはずだった──。
─Fine─
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