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どうあるべきか
日本の夫婦と言えば、昔は妻は良妻賢母とか、夫は亭主は元気で留守がいいとか。
家庭を守っているのは夫の給料と妻であり、夫の存在はお金であらわされたような気がする。
最近はもう、共働きが当たり前だけれど、まだ良妻賢母のイメージって消えていないし、亭主は元気で留守が良いも、残っている気がするのは、まあさが還暦だからだろうか。
妻、小林 まあさ。今年で還暦を迎えた。
夫、小林 けんじ。夫も同じ年なので還暦である。
けんじとまあさは再婚同士。
まあさは再婚前に一度体調を崩し、実家に帰っていた。
その後、再婚して東京に戻ってきてからももう、仕事にはつかなかった。
一度だけ、ごく近所の写真屋さんにパートに出たが、一番忙しい卒園式を控えた時期にまあさの実家の母が亡くなり、店の後始末や、遺産相続にかかわる手続きなどで忙しくなった。
一番パート先が忙しい時期だったので、無責任に休み続けることもできなく、事情を話して、やむなくパートはやめた。
けんじも還暦後は会社も嘱託になり、週に一度出勤するだけになったため、元気で留守がいいと言う訳にもいかなくなった。
そもそも、まあさは自分が良妻賢母とも思っていない。
家事は大嫌いだ。
息子たちも前の夫の所に置いてきた。息子たちは二人とも大好きだが、病気だったためやむなく置いてきた。
息子たちの為の家事はしていた。できないわけではないが嫌いなのだ。
もとよりそんな状態なので、小林夫妻は還暦と言う年齢なのに昔の夫婦とは全く違う。
まあさは昼と夜の食事の片づけをする。お洗濯もする。ゴミ捨てもする。猫の世話もする。金魚の世話もする。
朝食は協力して並べる。作る物はゆで卵だけで、週末にまとめてゆでているから。
お昼はけんじが作る。
夜は最近はまあさが汁物や煮物を作っておいて、そこに生協の冷凍食品を足す。
掃除全般はけんじが自主的に引き受けてくれている。
けんじが出勤の日は掃除は無し。
お風呂の掃除もけんじがする。
あと、徐々に散らかりつつチラシ類もけんじが気が付いた時に箱を折ったり、片付けたりしてくれる。
まあさは疲れやすいので、疲れたら昼寝をする。
まあさはなんどもけんじに聞く。
「ねぇ、私ってこんなんで本当にけんじは再婚したこと後悔してないの?」
「まあさがいないとだめだから結婚したんだよ。」
けんじはそう言ってくれるので、まあさは安心して、できる家事を最低限してすごす。
今どきでも、奥様がワンオペで家事、育児をしている奥様達には申し訳ないが、まあさはとても幸せだ。
そして、まあさが幸せでいる事がけんじの幸せらしいので、まあさはけんじの言葉に嘘はないと信じて、甘えている。
こんな夫婦の形もあるのだと、前の結婚時に辛かった記憶をまあさは忘れようとしている。
まあさの存在もけんじの役に立っているのだったらそれで嬉しい。
まあさは時々死にたくなる自分と決別しようと、毎日の幸せを見つめながらけんじとともに生きて行こうと改めて思った。
【了】
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