初めての夜

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初めての夜

寝返りを打ったのか、二段ベッドの上からベッドの軋む音が聞こえる。 同じ部屋で誰かが寝ているということに慣れない僕は、今日も眠れない。 備え付けのカーテンは、わざとなのかとても薄くて、窓の直ぐ前に立っている外灯の明かりが、部屋の奥まで延びている。 真っ暗な中で眠ることが習慣だった僕は、その明るさにも慣れなかった。 「上にして貰えば良かった」 小さく呟きながら、二段ベッドの下で寝返りをうち、少しでも明かりをかわそうと壁を見る。 「今日も……眠れないのか?」 とっくに寝ていると思った二段ベッドの上から聞こえる声。 気付かれてたんだ……… 「ううん。大丈夫」 三日前に知り合ったルームメートに気を遣わせてる。早く眠らないと……… 僕はグッと目をつぶると、頭の中で羊を数えだした。これにどれだけの効果があるのか分からないけど…… 少しすると、上のベッドから音がしてゆっくりと降りてくる人影。 すると、僕のベッドに注がれていた光が急に途切れ、暗闇に包まれた。 慌てて壁の方から振り返ると、ルームメートの結(ゆい)が、大きな何かを上のベッドから垂らすように移動してる。 毛布? 「これで暗くなっただろう?」 上から垂らされた毛布を、少し捲って結が僕に問いかける。 「うん……でも、結くんの毛布、こんな風に使ったら、寒くて眠れないよ」 いくら4月といえ、まだまだ夜は冷える。何も掛けずに寝たら風邪を引いてしまう。 「じゃあ……」 ベッドの横で少し考えた結は、なぜか僕のベッドに潜り込んできた。 「こうして寝れば寒くない……」 僕の身体を壁の方に向かせると、僕の毛布の中で、後ろから抱き締めるように横になる。 「えっ!えっ?こうして寝るの?」 来年には中学に上がる僕。さすがに小学校高学年になってから、誰かと一緒に同じベッドに寝ることなんてなかった。 いくら暗くなっても………これじゃ余計に寝られないんじゃ……… 抱き枕のように僕を抱き締めている結。 いくら待っても僕の問いかけに返事は返ってこなくて、暫くすると小さな寝息が僕の髪を揺らした。 あったかい………… 結の体温が、心地好い……… 小さい頃の、父さんと母さんに挟まれて眠った記憶が甦る。 少しだけ鼻の奥がつんとなったけど、規則的に感じる結の呼吸に、いつしか重くなっていく目蓋。 僕はその日、この場所に来て初めて深い眠りについた。 あれから4年………… 僕達は、相変わらず同じベッドで眠っていた。
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