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太陽の家 2
「よく似合ってるじゃないか」
僕と結は朝食のあと、ばあちゃんに高校の制服を見せに来るように言われてた。
食堂の隣にあるばあちゃんの部屋。お気に入りの椅子に座って僕達を見るばあちゃんの目は、とても優しい。
中学の学ランから変わったジャケット姿の僕ら。青いネクタイは自分で出来なくて、お互いで結びあった。
「紬(つむぎ)、緊張してるんだって」
「ばらすなよ……初めての場所は仕方ないだろ」
隣でからかうように言う結の腕を小突く。
「うちの子ども達は、どこに行っても大丈夫。私が育てたんだから」
ばあちゃんが、首を縦に振りながら微笑んで言う。
その笑顔につられて僕らも頷いた。
ばあちゃんが作った太陽の家。
もともとは沢山の子ども達が居たらしい。もうすぐ75歳になるばあちゃんは、僕が来た時に、これで子どもを預かるのは最後にしようと思ったらしい。
僕達の一つ年下の新が、高校を卒業するまで………
そう思ってたばあちゃんのところに、どうしてもと依頼があったのが陸だ。
ばあちゃんに話が来た時、まだ1歳にもなってなかった陸。きっと18歳まで自分で育ててあげることは無理だ、そう思ったばあちゃんは、最初断っていたそうだ。
でもその時に、すでに一人立ちして働いていた蓮さんが遊びに来ていて、話を聞いていた。
そして突然、蓮さんは自分がばあちゃんのあとを継ぐと宣言をした。だから陸を引き取ろうと。
「自分と陸の境遇が似てたんだ」
あとで蓮さんに聞いた話。
「それに、実家って無くなって欲しくないだろう」
そう言って、太陽みたいに笑って陸を抱く。今では本当の親子のように遊ぶ二人。
僕達も小さな末っ子が可愛くて、ついつい甘やかしてしまう。
蓮さんは陸の過去を知ってるけど、僕達はお互いの過去を知らない。同じ部屋で寝起きをする結の過去でさえも………
「大事なのは今だろう?」
ばあちゃんにそう教えられてきた。
「さあ!胸張って行っておいで」
僕らの背中が、小さくて温かい手に押された。
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