太陽の家 2

1/1
前へ
/62ページ
次へ

太陽の家 2

「よく似合ってるじゃないか」 僕と結は朝食のあと、ばあちゃんに高校の制服を見せに来るように言われてた。 食堂の隣にあるばあちゃんの部屋。お気に入りの椅子に座って僕達を見るばあちゃんの目は、とても優しい。 中学の学ランから変わったジャケット姿の僕ら。青いネクタイは自分で出来なくて、お互いで結びあった。 「紬(つむぎ)、緊張してるんだって」 「ばらすなよ……初めての場所は仕方ないだろ」 隣でからかうように言う結の腕を小突く。 「うちの子ども達は、どこに行っても大丈夫。私が育てたんだから」 ばあちゃんが、首を縦に振りながら微笑んで言う。 その笑顔につられて僕らも頷いた。 ばあちゃんが作った太陽の家。 もともとは沢山の子ども達が居たらしい。もうすぐ75歳になるばあちゃんは、僕が来た時に、これで子どもを預かるのは最後にしようと思ったらしい。 僕達の一つ年下の新が、高校を卒業するまで……… そう思ってたばあちゃんのところに、どうしてもと依頼があったのが陸だ。 ばあちゃんに話が来た時、まだ1歳にもなってなかった陸。きっと18歳まで自分で育ててあげることは無理だ、そう思ったばあちゃんは、最初断っていたそうだ。 でもその時に、すでに一人立ちして働いていた蓮さんが遊びに来ていて、話を聞いていた。 そして突然、蓮さんは自分がばあちゃんのあとを継ぐと宣言をした。だから陸を引き取ろうと。 「自分と陸の境遇が似てたんだ」 あとで蓮さんに聞いた話。 「それに、実家って無くなって欲しくないだろう」 そう言って、太陽みたいに笑って陸を抱く。今では本当の親子のように遊ぶ二人。 僕達も小さな末っ子が可愛くて、ついつい甘やかしてしまう。 蓮さんは陸の過去を知ってるけど、僕達はお互いの過去を知らない。同じ部屋で寝起きをする結の過去でさえも……… 「大事なのは今だろう?」 ばあちゃんにそう教えられてきた。 「さあ!胸張って行っておいで」 僕らの背中が、小さくて温かい手に押された。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加