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太陽の家 3
蓮さんが運転するワンボックスカーに、みんなで乗り込む。
僕らが住む太陽の家は、海が近い山の中腹にあって街に出るには車が必要だ。
この春から高校三年生の響兄さん、高校二年生の凪兄さんと朔兄さん。それから今日から高校生の僕と結。そして中学三年生になる新。
みんなを乗せた車がカーブの道を下りながら、みんなの学校がある街まで進む。
陸だけは、僕達の世話をやいてくれている陽子さんが車で保育園に連れていく。
陽子さんの娘さんとは、今日から同じ高校だって結が言ってた。
初めての事に凄く緊張する僕は、車の揺れよりも心臓の振動の方が強く感じていた。
太陽の家に来て、少しはマシになったと思ったのに………
隣に座った結が、黙ってずっと手を握っててくれてるのは、そんな僕の事を分かってくれてるから。
もう4年もこの温もりに救われてる。
「紬、またみんな一緒だから」
反対の隣で、凪兄さんが肩を抱いてくれた。
「来年は、俺も行くしね」
前の席から新が顔を出す。
「お前は、もう少し勉強を頑張らないと……」
朔兄さんがそう言って新の肩を叩いた。
そう、今日から通う高校には3人の兄さんがいる。結も一緒だ。
僕達は血は繋がってないけど、誰よりも家族を思いやってる。
「さあ、着いたぞ。今日は二回に分けて迎えに来るからな。紬と結は昼の1時頃。他の4人は夕方6時でいいか?」
みんなが頷きながら車を降りた。バスも通ってない太陽の家に帰るには、蓮さんのお迎えが必要だ。
「時間に遅れるなよ。結、紬のこと頼むぞ」
みんなに心配されてる自分のことが、少し情けなくなった。
結より僕の方が2ヶ月年上なのに………
車から降りて少し歩くと、高校の門が見えてきた。僕はさりげなく結に握られていた手を離す。
一瞬動きを止めた結が、僕を見つめる。
綺麗な顔………
すっと通った鼻筋と、一重なのに大きな目。笑うと四角くなる整った唇。
初めて会った時、今日と同じくらい心臓が速く動いたのを覚えてる。
「大丈夫だから…」
少し上を向いて、僕より背の高い結の心配そうな顔に向かって言う。
「同じクラスだといいな」
そう言って、前を向いて歩き出す結。
家族で、兄弟で、親友で、ずっと側にいたい人。
僕はその隣に慌てて駆け寄ると、歩幅を合わせて歩き出した。
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