1抜け2抜け・・・あるフーフ=夫婦のおはなし

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「1抜けた」と私が言った。 「2抜けた」と夫が言った。 「1も2も抜ければ、まっさらのゼロだね」と2人で口を揃えた。 これで、フーフ関係もジ・エンド、さっぱりしたものだ。 だが、フーフ=夫婦と言っても、事実婚であるのだから、戸籍がどうこうという面倒さもなく、さっさと関係性の解消は果たされる。 あっさりしたもんだね、と元・夫が笑えば、ホントそうよねと元・妻の私も何だか笑えた。 それぞれが仕事を持っている。 だから、二人とも忙しい。 1抜けた2抜けたと言っているうちにも時間は過ぎて行くのである。 今日は一つ商談がまとまった、難航していただけに嬉しい、と商事会社勤めの元・夫が喜べば、それは良かった、ホントによかったと私もすなおに喜んであげて、ビールのグラスを合わせる。 私の方でも、このところスマッシュヒットと呼べそうなものはないけれども(私は元・夫の会社近くの物流会社で宣伝の仕事をしている)、上司から、あなたがいてくれるだけでも職場の雰囲気が安らぐ、これからもずっとそんな調子でいて欲しいなどとわざわざ言われてしまえば嬉しくないわけもない。 喜び合い、お酒のグラスを合わせる場所は、事実婚を証してきた私達の家である。 そう、1抜けた2抜けたと関係性が解消しても、私達は二人暮らしを続けている。 これって、ヘンかい、おかしいかい、と元・夫が訊く前に、これっていいものよね、私達に似合っているのね、と私は先回りして、ますます乾杯をしたい気持になった。 寝室は、今も以前も別である。 時々、さびしくなると、夫は私の寝床へと忍び込んでくるようなことをするが、まあまあと私は笑って、明日のお昼ご飯は何を食べようかな、職場の後輩のマリコちゃんを誘って、開店してまもないトンカツ屋さんにでも行こうかな、なんて独り言を洩らすようにしてやると、ああ、その店は僕も知ってる、昼時はいつも行列だよねと笑うが、今度一緒に行こうかなどとは言わない。そんなこんなで、気が付けば、私の隣りで元・夫は寝息を立てている。 1抜けようが、2抜けようが、こんなぐあい、私たちは嫌味なくも節度を保って暮らしている。それが私たちの良さだと元・夫は心得ている。そんな彼を、私は好きだなと思う。 好きならば、1抜けも2抜けもしなければ良さそうだが、してしまったものは仕方がない。 「いちど、まっさらになった1本道をさ、また2人で歩んでくのもオツなものじゃないかい」 それしきのことをあっさり言ってのける元・夫が、私はやっぱり好きみたいだ。 1抜け2抜けをしてから、ヒト月ほどが経った頃、元・夫は一人の青年を家に連れてきた。 「どーゆー関係?」 「どーってことはないカンケイ」 「あ、そうなのね」 「そう、そんな感じ」 大学院生。アルバイト生として、うちの会社で雑用係をやっていたが、三日前に、正社員がやって来たので、クビになった――「というわけで、面倒を見てやりたくなってね」と元・夫はセツメイした。 「アルトです。アルトは、有留都と書きます」 その名前の漢字を、1文字1文字、細い指先でアルトくんなる青年は宙に書き、にっこり微笑んだが、有留都よりアルトの方がスッキリしていて自分は好きだ、だからお二人もカタカナのアルトってつもりで呼んでください、とそんなことを言って笑った。いたずら好きな子リスのそれのような前歯が印象的で、「よろしくね、アルトくん」と私は返した。 「助かります。宿無しなもので」 初対面の私に向かって、アルトくんはハツラツと言ってのけたりもする。 「ヤ、ヤドナシ、なの?」 「ハイ。アパートのお家賃、滞納してて。その上、アルバイトもクビになっちゃえば、すっからかんってわけで。追い出されてしまいました」 そんなこともないだろ、と元・夫は笑って助け舟を出す。 「このアルトくんは優秀な発明家のタマゴでね。すでに特許申請をしている発明品もいくつかあって、商品化の話も出ていたりしている。前途、有望な青年だ」 ヘー、と私は感心して、あらためてアルトくんを見た。 見るからに額が広い。この裡側に、発明品をドンドンと生み出す賢い脳細胞がびっしりと詰まっているのだろうか――そんな私の様子に、元・夫は我が意を得たりと言わんばかり、アタマがいいだけじゃない。彼は腕っぷしも強い、空手など段持ちなんだよと更に褒める。 ヘー、と飽きずに感心するわたしに、アルトくんはちょっと気取って、力こぶを拵えるようなポーズを取ってみせた。 「このところ、この辺りも物騒で、近所のお宅が空き巣の被害に遭ったりしているからね。彼は用心棒にもなってくれそうだよ」と元・夫は得意げだ。 名案かもね、と私も頷いた。共働きなのだから日中は留守になるが、そこにこの青年が留守番代わり居てくれるというわけだろう。 じゃ、決まりと元・夫はえがおで、アルトくんともっともらしく握手を交わし、さて、アルバイト料はいくらにしようかなと青年の肩に手を置く。 あら、そんなものもあげるのと私は戸惑うような思いを感じた。 お部屋も提供してあげて、そのうえ……と思ったのである。 だが、元・夫は、当たり前だろうという表情。 「留守番役にも用心棒にもなってくれて、加えて、何かとんでもない大発明でもしてくれれば、こっちだって、テレビなんかでパトロン的存在として紹介されたりとかもしてね、鼻高々さ」とまんざらでもなさそうな顔をして笑う。 パトロンとは大袈裟なと苦笑しながら、そんなものかしらねえ、と私は反対しなかった。反対するもしないも、夫でも妻でもない私達なのだから、元・夫が何をしようが、口を挟むことはないのだと思った。 食事は別々、コンビニ弁当でも何でも買って済ませる。 洗濯や部屋の掃除も、もちろん自分で。 こちらが提示した同居のルールを、アルトくんはきちんと守る。 それでも、日曜の午後のお茶などは一緒に楽しみ、会話を交わす。 「ユニークなご関係のご夫婦、あ、ご夫婦と言っちゃいけないのかな」 「お好きなように」 「いえ、どうであれ、何だか憧れちゃうな。お二人の関係性」 「アルトくん、ご結婚の予定は? あら、こんなことまで伺っちゃいけないわよね。ゴメンナサイ」 「予定があるのなら、この家に住むなんてことはないのじゃないかい」 元・夫が透かさず助け舟を出して、笑う。アルトくんも笑う。 「予定も何も、こんなビンボーにんげんに、ケッコンなんて夢みたいなものです」 ああ、そうよねと思わず頷きかける私を、こらこらと元・夫はまた笑う。 アルトくんがこの家に来てから、いつも彼は笑っている、と私はその横顔を見た。 〈1日3分唇に挟んでいれば1週間で禁煙ができます〉との洗濯バサミみたいな形をしたクリップや、〈朝昼晩とペットの頭に乗っけていれば、そのペットはいずれ人間の言葉が喋れるようになれる、かもシレマセン〉という三角帽子(頭から外れないように顎で止める紐付き)等々、いろいろと考案中の発明品はあるのですが、最後の詰めが甘いというのか、完成まで持っていけていなくって困惑している……アルトくんは、時々そんな愚痴を洩らすこともあったが、物腰も上品だし、見た目も悪くないし、と私も日に日に好感らしきものを抱いていった。 未完の大器だ、そのうちスゴイことになる、と元・夫も変わらず讃えてやまない。 「ホントに大好きなのねえ、あの青年が」 「文句ある?」 「ないわよ。どうぞ、ご自由に」 「うん?」 「そうよ、ご自由に、アルトくんをあいしてさしあげるといいわ」 「あ、愛ね。そうだね」 元・夫と私はどうということもなく頷き合って、微笑む、笑う。 いい青年といると、何だか毎日が楽しいね、と元・夫と私は声を揃えて、また微笑む、笑う。 そんなアルトくんは、ある日、快挙をやってのけた。 と言っても偉大な発明品をモノにした、というのではない。 未検挙のままだった空き巣の犯人を捕まえたのである。 夕時欠かさないウオーキングの途中、3軒隣りの家の庭先で不審な動作をしている男を見つけ、あ、こいつが、と直感を働かせたアルトくんは、「もしもし」なんて声をかけた。「何をしているのですか」と訊けば、「いえガスメーターの検針に来ていて」などと男は言い訳する。「そんなところにメーターなんてあるわけないでしょ、そこにあるのは、庭に水撒きなどするための水道の蛇口ですよ」と言ってやると、男は顔色を変えて、途端に逃げようとした。透かさず「賊よ、待てッ」とアルトくんは見事、空き巣の犯人をひっ捕まえた。男は抵抗したけれど、そこはさすがのアルトくん、空手の段持ちが活きて、組み伏せに成功したというわけだ。 この頃時々見かけるようなあの青年は何者?とご近所の人たちから思われていたようなアルトくんは、一躍ヒーローになった。 「どうだい。僕の言った通りだろう」 「目に狂いはなかったってとこかしらね」 「そう、そう」 警察からも感謝状など受け取り、その日の夕食は、ごちそうもたっぷり。何だか誕生日のお祝いでもしていただいているみたいだとアルトくんは嬉しがる。 「どうだい、発明の方は」 「まあまあです。がんばってます」 「その調子、その調子」 元・夫婦2人に励まされて、アルトくんは、ハイッと元気な返事をした。 そして、ヒト月フタ月が過ぎる頃、私は、元・夫から告白を受けた。 「実はねー」 「あら、何かしら?」 「いや、実に実はね、そうだよ、この僕は結婚したいんだ。アルトくんと」 「ああ、そうなのねえ」 私は動じなかった。 元・夫と私自身との関係と同じように、結婚と言っても、法律上の成約はないが、自分とアルトくんは心を誓い合っている、これは確かな誓約なのだと自慢そうだ。 このままアルトくんと同居を続ける、今までと形態は変わらない。ただ、アルトくんと自分が結婚しているという状態を、同じく同居人である、元・妻のきみに認めてもらえれば、言うことなしなんだと元・夫は言葉に力を込めた。 「アルトくんも賛成してるってことね」 「モッチロン」 「私は出て行くことになるのかしら」 「出て行く? どうして?」 「だって、お邪魔じゃないかしら」 「心外だな」 「あら?」 「みんな、このままだよ。きみと僕、アルトくん、みんなでいっしょに暮らすのさ」 あ、そーゆーこと。私はサバサバと納得して、アルトくーん、そろそろごはんよーと元気な声で、自室に籠って発明に勤しんでいる彼を呼んだ。 結婚後、アルトくんは発明家として調子が出てきたようだった。 〈1日3分唇に挟んでいれば1週間で禁煙ができます〉との洗濯バサミみたいな形をしたクリップも、〈朝昼晩とペットの頭に乗っけていれば、そのペットはいずれ人間の言葉が喋れるようになれる、かもシレマセン〉という三角帽子も、最後のツメがうまく行きそうで、完成間近だと機嫌がいい。 そんなアルトくんが、ある休日の午後、ヤッターとひときわの快哉をあげて、元・夫と私を自室へと呼んだ。 「どうしたんだい?」 「成功しました。歓んでください、お二人とも」 「な、何に成功したの?」 「ですから、発明です。長年の研鑽が実を結びましたッ」 涙を流さんばかり興奮するアルトくんは、アルトくんは、まずは私の元・夫、そして私の頬へとわるびれずのキスをし、ハーッと大きく息を吐いた。 「お二人のおかげで――つまり、お二人が、僕の今いる環境を与えてくださったそのおかげで、僕はついについに念願の大発明に成功したというわけなのです」 「ああ、例の禁煙クリップとか、ペットがおしゃべりOKになるかもしれない三角帽子とかのこと?」 「違います、もっと凄い偉大な発明なんです」 「タイムマシンとかの発明が成功して、きみがどこか知らない世界へ行っちゃうなンてのはイヤだよ」 「そうだわ、それは私もイヤだわ」 私と元・夫は口を揃えて、マジメにそう言っていた。 逆ですよ、とアルトくんは笑った。 「ぼくはずっと、お二人の傍にいさせていただく。そのつもりです――ていうか、僕とこちらは何といってもケッコンなんてことまでしているのですから」 私の元・夫を見やりながらまた笑うアルトくんに、「そうだ、そうだったね」と私と元・夫は不意を衝かれたように言い合い、ホッとしている。 そんな私達に、アルトくんは、この度の大発明について語る。 「――たとえば、ここに一人のにんげんがいる。その傍らにもう一人のにんげんがいる。二人は愛し合っている。結婚したいと思う。しかし、二人には障害がある。そう、にんげん誰しも言いしれない困難や問題ってものを抱えて生きている。それでも、二人は結婚して、フーフ=夫婦という存在になり合いたいと願う。そこで、僕の大発明品がお役に立つというものなのです」 「ど、何処にあるの。その発明品は」 私と元・夫は再び口を揃えて訊き、部屋の中を見渡した。 アルトくんは、うふっと笑って、 「目の前にいますよ」と我が身を指した。 「――その発明品とは、つまりはこの僕、僕自身ってわけなのですから」 その日から、アルトくんは留守がちになった。 ネットで、〈ご相談に応じます〉と宣伝したところ、フーフ=夫婦になりたいが諸事情のためなれないという数多くのカップルから、〈何とかして!〉と念願成就の依頼が続々と舞い込んで来たらしい。 その誰しもの所へと、アルトくんは出掛けて行く。遠い町へのこともあり、「ちょっと出張に」と張り切って出掛けて行くのである。 どうやって、悩めるカップルの皆さんを、フーフ=夫婦にしてあげているのかと訊くと、 「何も難しいことはありません。僕が、カップルの所まで行って、うふふなんて微笑んでさしあげるだけでそれは叶うのです」とアルトくんは、うふふと全く微笑を浮かべてこたえる。 「あなたって、フシギな人ね。いえ、今さら言うのもナンだけど」 「――そう、そんなフシギくんを、この僕はあいして、ケッコンまでしてしまったわけだね」 元・夫と私は妙な納得の仕方をしながら、アルトくんの〝善行〟を応援しなくては、という気持にならされていった。 「留守番とか用心棒をか、そんな次元で、彼のことを考えては疾っくにダメなんだ。今や、世の人々を日夜救ってやまない彼は大発明家なのだからね」 「救世主と言ってもイイ」 「そうだ、その通りだ。きみはイイこと言うね。さすが、僕の元・妻だ」 私達はウキウキしてきて、アルトくんのご帰還を待つのだった。 珍しく、出張などなくて、休日も家にいるアルトくんと私達はこんな会話も交わしたものだ―― 「教えて欲しいわ。あなたの成し得たグレートな発明の仕組みはどうなっているの?」 「仕組み? カンタンなことですよ。いや、ある意味、カンタンだから深いとも言えるのかな。こたえは、あなた方、お二人にあります」 「私達?」 「そうです、元・夫であったこちらと元・妻であったあなた。あなた方お二人と生活を共にしているうち、僕は、自然に、イイ意味、そうだな、侵食されて……」 「シ、侵食?」 「そうです。元・夫であり、元・妻であったお二人の今現在のよろしき関係性、その妙なるエキスのようなものが、一緒に暮らすこの僕というにんげんに、日に日に染み渡って、僕を魔法使いのようなそんざいにしてくれた。そういう観点から言うと、偉大な発明家は、あなた方お二人と言えるのかもしれませんね」 「そんな。だって私達は、お別れしたはずの元・夫であり、元・妻なのよ。そんな私達がどうして、あなたを侵食して、縁結びの神様みたいなものにしてさしあげられたのかしら」 「元・夫であり、元・妻であるお二人だからこそ、僕は惹かれるところもあったわけで」 「謎めいた言い方ね」 「謎って……そうだな。そもそも、フーフ=夫婦であることそのものが、謎なのかもしれない」 一瞬、惑いの表情を浮かべるかのようなアルトくんだが、すぐさま、フツーの青年にも戻ってみせる振り、「あー、お腹へっちゃった」とそんなご愛嬌も見せて、また私達をケムに巻いてくれるのだった。 それから、 ……しばらくの時が過ぎた。 陽が昇って、沈む。月が出て、沈む。また陽が昇る。 私は、最近、気持が落ち込んでいる。 なぜなら、元・夫がすっかり元気をなくしているからだ。 無理もない。 元・夫は三日前、アルトくんから、ある告白を受けたのだという。 「突然ですが、僕って、ケッコンしようなんて思ってますのデス」 「ケッコン? きみはこの僕と、疾っくにケッコンしてるじゃないか」 「だから、このたびのケッコンは、別の人とってことなんですが」 夫は蒼白になって、私に泣きついてきた。 「こんなことってあるだろうか。一方的に、アルトくんがケッコンを解消しようっていうのだよ」 いったい、どうしたっていうのと訊けば、元・夫の返答はこうだった。 例によってのご依頼――今回のカップルは、工場勤務の男性と看護師の女性、相思相愛もいいところだが、年齢差が二十歳近くあり「そんな年上の女性と」と男性の両親が難色を示しているのだと依頼のメールには記されていた。 アルトくんは、すぐさま彼らの住む遠方の街まで出かけて行ったが、電車があいにく脱線事故に遭い、足止めを食らってしまって、半日遅れの到着となった。 アルトくんを迎えたのは、目を泣きはらした看護師の女性一人だった。 お相手の方はどうしたのですかと訊けば、亡くなりましたとこたえる。 「電車に飛び込んだのです、あっという間の死です」 好きな人との結婚が叶わないことをはかなんで……間に合わなかったかと絶句するしかないアルトくんは、瞬時の決断を下した。 「ケッコンしましょう、僕とあなた。そうです、あなたと僕」 「え?」 「それがいい、そうするのがいいんだ」 その女性を救うためには、この自分が、彼女の夫となってあげるしかない。それで、彼女は救われる。アルトくんの瞬時の決断だった。 「――こんなのってあるかい? 僕は捨てられてしまうんだよ。こうもあっけなく、あっけらかんと」 オイオイと情けなくも涙を流す元・夫を、私はただやさしく抱きしめてあげた。 「そんなに泣かなくっていいのよ」 元・夫の右の頬にキスをしながら、私は言った。 「どうってことないわよ」 「え?」 泣き続けながら、私を見詰める1人の男は、すでに元・夫でなかった。 「カンタンなことよ。私とあなたが、またケッコンすればいい。私達、また夫婦になりましょう」 私は、元・夫の、今度は左の頬にキスをした。 「そうよ。私達は、元通り、夫婦になるのよ。1抜けた、2抜けたとゼロのまっさらの関係になっていたはずの私達だからこそ、また再びの夫婦にも戻れるってことよ」 「そ、そうなのかい?」 ようやく泣き止んだ元・夫はすでに、〝元・夫〟ではなかった。 「1抜けない」 「2抜けない」 私達はアルトくんにも負けずの微笑を浮かべて、久しぶりのキスを交わした。
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