空が泣く

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たくさんの雨粒が窓を打ち付ける。 ここまで激しい雨はいつ振りだろうか。 豪雨だからといって会社や学校が休みになるわけではないから、雨が降っているということ以外は普通の日常だ。 オフィス内の空気はまるでこの薄暗い空のようである。 ここにいる皆、口には出さないが毎日毎日必死にしがみついて立っているのだ。 歯を食いしばって耐えて耐える。 生きるために。 苦しいとか、しんどいとか、そういった感情はある程度麻痺しているみたいだ。 子供のように声を上げて泣きじゃくれば楽になるのだろうか。 残念なことにどうやら歳を重ねると、涙というものを何処かに置いてきてしまうらしい。 そんな愚かで滑稽な人間を愛おしむかのように。 僕らの代わりに空は泣いた。
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