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「猫の鳴き声がする」
アパートに戻ってきた時のことだ。微かに鳴き声が聞こえた。
「本当だ、寒いし大丈夫かな」
子猫大捜索を行ったのだが、子猫は無事すぐに見つけることができた。部屋のベランダの下のあたり。おでんの匂いに誘われてきたのだろうか。
「ねぇ、この子うちで飼おうよ」
家族が増えるのも幸せかもしれない。ふいに閃いたのだ。
「え?お世話大変だよ。僕たちにできるかな」
お義母さんも同じようなことを言っていた。猫ではなく子どもだったけど。
「大丈夫だよ。私たち二人いればこんなにおいしいおでんを作れるんだよ。猫も子どももこのおでんがある家は幸せでしょ」
「千代ちゃんはやっぱりすごいね」
良平さんが私の頭をなでてくれた。すごいね。何度も繰り返し。私は全然すごくないのに。
「こんなにおいしいおでんを作れる私たちは最強夫婦だからね。少しくらい幸せをお裾分けしなくちゃ」
「まさか、本当におでんをあげるんじゃないよね?会社からペットフードの試供品もらってくるよ」
真面目な良平さんは本気で慌てている。
「名前はおでんにしよう」
もし、私たちが生まれ変わったら、おでんの卵がいいな。二人ならんで大きな鍋の中、みんなを見守りながらおいしいお出汁に仲良く浸っていたい。
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