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日曜日、父と兄と三人で、遊園地へ行く。
まりえちゃんにいつ会えるのかな、と楽しみにしていたら、途中で知らないおばさんが車に乗ってきた。
「オオバマリコです」
とおばさんは言った。
ちょっと、まりえちゃんに似た名前だ。
つつましやかな雰囲気も、少しまりえちゃんに似ていた。
おばさんが、巧と奏が乗っている後ろの席に乗ってきて、巧は驚く。
大人は前の席に乗るんじゃないのだろうか。
でも、四人でいる時は、助手席はいつだって、まりえちゃんの席だった。
今日は、まりえちゃんが来るから、きっと助手席は空けてあるのだ。
だから、にこにこ笑って、お客さんに、こんにちはを言う。
そうすると、大人が喜ぶことを巧は知っている。
お客さんを喜ばせたら、あとでまりえちゃんが「いい子ね、たっくん」と褒めてくれるかもしれない。
兄の奏は、いつも誰にも優しいのに、このお客さんにはむすっとして、黙っていた。
巧のことを非難するような眼で見る。
どうしてだか、巧にはわからなかった。
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