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午前七時。目覚ましの音が鳴り出す前に時計に手を伸ばす。隣のベッドはすでに空、今日も妻の菜奈ちゃんは先に起きている。
俺が洗面所へ向かうと、化粧をして髪を整えた菜奈ちゃんが出てきたところだった。洗面所が空く時間を狙って起きているのだから、これは当然のこと。
「おはよう」と声を掛け合って一日が始まる。
結婚三年目ともなると、生活がマンネリしてくるという人もいる。しかし俺はマンネリどころか毎日がエキサイティングで飽きることがない。
歯を磨き、ひげを剃りつつ顔を洗い、寝癖を直したら完了。所要時間は約十分。
俺の仕事は調理で、店は昼からの営業だから時間はまだたっぷりある。それでも身支度は手早く済ます。朝は何と言っても菜奈ちゃんが作ってくれた料理を食べるのに全力を注ぎたい。いつも提供する側の俺にとって、菜奈ちゃんが作ってくれる朝ごはんは自分で作るより数倍もうまいのだ。
濡れた手をタオルで拭いていると、
「きゃあっ」
この日最初の悲鳴が、試合開始のゴングのように響いた。
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