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「他に俺がやれることはない?」
「えっとね、こっちはもう大丈夫。そうだ、レンくん。今日は天気いいから洗濯物お願い」
「洗濯か。おっけー」
菜奈ちゃんが皿に目玉焼きとウインナーを載せている。もう少しで食事が出来あがりそうだ。その前に洗濯機を動かしておこうと、再び洗面所へ。
洗い物は洗濯機の中へ直接放り込んであるから、回すだけだ。洗濯槽に洗剤を入れて運転ボタンを押す。
その直後、キッチンから菜奈ちゃんの声が。
「昨日の夜にね、予約しておいたから後は干すだけねー」
えっ、これ、もう洗ってあるのか。しかしもう洗濯槽には水が入ってしまっている。
やばい。一度洗ったものを二度も洗うのは、洗剤や水がもったいない以前に、菜奈ちゃんが気を利かせてやってくれたことを台無しにしてしまう。
ああ、どうして蓋を開けたときにちゃんと見なかったのだ。と後悔するのは後回しだ。どうしよう、何と言い訳をすれば。
素直に不注意を謝るか。いや、それだと食事中は一言も口を利いてくれない可能性が大だ。せっかく菜奈ちゃんが作ってくれた朝食を、申し訳ない思いで食べるのは嫌だ。
こんなピンチな状況に打開策を生み出せるかどうかで、真の力が発揮されるというもの。菜奈ちゃんへの強い想いが、頭の中に良案を浮かべさせる。
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