いつもの朝

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 俺は鼻息を荒くして部屋を眺め回した。ふてぶてしい爬虫類の顔を思い出す。  トキサブロウのやつめ、どこにいるんだ。この2LDKのどこかにいることは分かっている。さっさと出てこい。   同じ(おす)として、菜奈ちゃんの愛を受けていることを妬いているのが伝わってしまっているのか、一向にやつは姿を現さない。それでも体長四十五センチだ。そんなものがどこかに居たらすぐに見つかると思ったが、なかなか見つからない。もしや外へ逃げ出してしまったのだろうか。    それだけはまずい。  どうか出てきてくれ。  頼むから。お願いします。    そんな気持ちを胸に秘め、二人でテーブルや椅子の下、電子レンジやテレビの裏まで見て回る。ふと時計を見ると、菜奈ちゃんが家を出る時間が迫っているではないか。 「俺が探しておくから、菜奈ちゃんは先に食べて」 「ううん、トキくんがいないなんて、ご飯が喉とおらない」  トキサブロウめ、お前の飼い主はこんなにも心配しているんだぞ。  憤りかけた気持ちはすぐに疑問へと変わる。もし俺がいなくなったら、菜奈ちゃんは同じようにご飯を食べられなくなるだろうか……?  いや、今はそんな例えを浮かべて妬いている場合ではない。  気合を入れ直したとき、菜奈ちゃんの声が上がる。 「あ、いた!」
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