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千華が若林家に遊びに来たのは数分前、冬休みの思い出を作ろうなんラインをしてきたときは、いいねなんて賛同したけど・・・
「わたし、嫌だよ。ママに嘘ついてそんな思い出作りたくない」
パンパンに詰められたエコバックに視線がいったわたしとママに平気で嘘をついた千華。
『甘いお菓子です。いっぱい食べようね?希実』
甘いお菓子だったら見せて
そう言えばよかったのに、中身を抱えたまま二階に上がっていく千華を追いかけていた。
*
猫目の視線がきつくなる。あーあなんて後ろ手をついて仰け反る千華。そうして、揺さぶるような言葉を次々とぶつけていく。
「希実、ひよってんの?あたしだってさーイケないことだって知ってるし。ただ、飲めばいいだけじゃん!!あたしとの友情は、こんなものだったの?」
ニュースで何度も耳にしている。オーバドーズをする若者がいると、それが若者たちの間で流行っていると聞いたとき、いつかは千華の口からその話題が出るんじゃないかと思ってた。
「友情とかそう言うのは流行りをするかしないかで決まるものなの?なら、おかしい!!」
遊びに来る時間をママがいなくなる時間にしたのはこういうことか。
「なに、マジになってんの?飲んでみて何もなかったら、それでいいじゃん。過激系反対派なの?」
冬休みに入ったとたん、金髪に染めてカールをかけて、ピアスの穴を開けた千華。
「わたしは、ママから聞いてるの。危ないことした十二歳の子がどうなったかって」
話しは終わりとばかりに、千華は立ち上がり、膨れ面のままわたしの部屋から出ていこうとする。
今、千華を止めなければ会えなくなっちゃうかもしれない。
「千華!!」
バシン!!
尖った爪先がわたしの手のひらに当たって傷をつけた。浅い傷だけど、ジンジンしている。わたしの手のひらを払いのけてこちらを見返った千華は。
「ノリ悪。バイバイだね。希実」
正しいことを正しいと言って機嫌を損ねた千華と会えたのは、この日が最後。
金色のロングヘアーがなびくのを、乱暴に開けられた扉の中でただただ見ていたわたし。
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