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二人の間に通る冷たい夜の風。
【ほら、どうした?来いよ】
人差し指をクイックイッと動かし、青年を煽るスレッド。
「……クッ!!」
未だ恐怖を抱いたままの青年は半ば自棄糞気味にバットを摺りながら駆け出す。
「たぁぁぁぁあ!!」
叫びながら振り下ろし、またもや当然のように空を切るバット。
持ち方を即座に変えた青年は横に薙ぎ払う。
ブンッ!
【遅ぇ動きだぜ、ナメクジか?お前はよぉ~!】
「ッ!」
スレッドは人間離れした跳躍で飛び上がり、明かりが消えた街頭に自身が出したと思われる蜘蛛の糸を使って、ぶら下がっていた。
【この糸はよぉ~何処から出したと思う?】
「クソッがっ!!」
逆さまの体勢で訊いてくるスレッドに何度もバットを振るう青年だったがブランコのように四方八方へと回る男の動きに翻弄され、その全てが避けられる。
「はぁ……はぁ……」
息を切らして、思わず膝に手を突いてしまう青年。
隙を見せてしまったのが仇となり、スレッドは勢いを付けながら彼の顎を殴り飛ばした。
バギッ!!
「ぐあっっ!!」
血を噴き出し、宙を舞う青年。
【甘いな、お前は。餓えた獣を前にして目を一瞬でも離すとどうなるのか分かってねぇらしい。
俺が余裕ぶって手を出さなかったと思うか?
ハハハ!違うね!“蜘蛛”ってのは獲物を捕らえて直ぐに喰らうんじゃなく、じっくり苦しめ、溶かし、相手に最大限の絶望を与えながら捕食すのさ!!こんな風になぁ~!!】
先程の問いの答えだとスレッドは自身の口から大量の蜘蛛糸を吐き出す。
それは鉄塊のように硬く、体勢を立て直そうとした青年の顔面に着弾。
視界を奪う効果だけでなく、喰らわせた相手に物理的なダメージを与えられる“妨害”と“攻撃”が一体と為った技。
「痛ッ!!」
青年は額から流血し、地面に落下。
急いで剥ぎ取ろうとする彼だったが、糸の粘着性は接着剤といった物の比ではなく、全力を込めてもコンクリートのように固まって、びくともしなかった。
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