モテる幼馴染の秘密

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「なぁ、マルクス」  その気持ちをかき消すかのように、声を上げる。  マルクスは俺の言葉の続きをじっと待ってくれていた。その態度がいじらしく見えるのは、俺がおかしいのだろうか? 「俺たち、幼馴染だ。けど、それ以上に親友だ」  意地の悪い言葉だって、わかっていた。  でも、言わなくちゃならないと思った。  だって、期待させて裏切るくらいならば。今、ここでこいつの気持ちを木っ端みじんにするほうが、ずっといい。  そっちのほうが、ずっと優しい。 「だから、そういうの、考えられない」 「……ロドルフ」  正直、マルクスの性事情とか本当に「知らない」で蹴り飛ばしたかった。  もちろん、今の言葉だって蹴り飛ばしているつもりではあるのだ。ただ、もっと強く、きつく、蹴り飛ばしたかった。 「お前、ちゃんと医者に診てもらえよ。そうすれば、いつか治るだろうから」  医者だって万能じゃない。  もしかしたら、数年かかるかもしれない。逆に数日で治るかもしれない。  そこは定かではないけれど、今後も俺はマルクスの『親友』でいたい。それは、確かな本音。 「でも、正直見合いをする前にお前の気持ちがわかってよかったよ。……見合いして、返事した後だったら、狼狽えていただろうから」  肩をすくめて、そう言い切った。  俺に来ている縁談は、めちゃくちゃいい話だ。なので、断るという選択肢はほとんどない。  だけど、もしも、相手に会ったあとでマルクスに気持ちを伝えられていたら。  ……こんな風に、断ることはできなかっただろう。 「な、マルクス」  マルクスの手を掴んだ。  ぎゅっと握れば、マルクスが控えめに握り返してくれる。
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