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喉元まで出かかった言葉が、つっかえて出てきてくれない。
むしろ「好き」とか、「いいよ」とか。「好きにして」とか。
そんな言葉が出てきそうになって、ぐっと息を呑んでこらえた。
「……好きに、すれば」
結局、俺の口から出てきたのは可愛げなんてかけらもない言葉。
でも、マルクスにはそれでよかったらしい。奴は俺の身体を、ソファーの上に優しく押し倒す。
「本当、無理だったら言ってくれ」
「んっ」
俺の返事を聞く前に、マルクスがまた唇を重ねてきた。
今度はちゅっと音を立てて、ついばむようなキスを交わす。
(……熱くて、柔らかい)
今日初めて経験したキス。感触は、柔らかくて熱い。
単純な感想かもしれないけれど、俺にとっては重要なことだった。
(マルクスの唇って、甘い……)
もしかしたら、幸福感から味覚がおかしくなっているのかもしれない。
なんて思いつつ、マルクスとどちらともなく唇を重ね合わせる。
「……口、開けて」
何度か唇を重ねていれば、マルクスが小さくそう告げてくる。
逆らう意味もなかったから、俺は言われた通りに唇を開いた。うっすらと開いた唇に、マルクスの舌が強引にねじ込まれる。
「んっ、ん」
先ほどよりも荒々しく、口腔内を舐め回される。
マルクスの舌は、これっぽっちも優しくない。乱暴で、荒くて、気遣いなんてちっともない。
でも、なんだろうか。
……マルクスの余裕のなさが伝わってくるみたいで、少し嬉しい。
(……ってか、ちゃんと反応してるじゃん)
太ももに当たるソレは、確かに熱を持って硬くなっているのがわかった。
……反応しないなんて、嘘じゃんか。
(それとも、キスしてる相手が、俺だから――?)
俺だから、反応してくれているのか。そうだったとしたら……うん、女々しいかもだけど、嬉しい。
無意識のうちに、そう思っていた。
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