モテる幼馴染の秘密

15/31
前へ
/32ページ
次へ
 喉元まで出かかった言葉が、つっかえて出てきてくれない。  むしろ「好き」とか、「いいよ」とか。「好きにして」とか。  そんな言葉が出てきそうになって、ぐっと息を呑んでこらえた。 「……好きに、すれば」  結局、俺の口から出てきたのは可愛げなんてかけらもない言葉。  でも、マルクスにはそれでよかったらしい。奴は俺の身体を、ソファーの上に優しく押し倒す。 「本当、無理だったら言ってくれ」 「んっ」  俺の返事を聞く前に、マルクスがまた唇を重ねてきた。  今度はちゅっと音を立てて、ついばむようなキスを交わす。 (……熱くて、柔らかい)  今日初めて経験したキス。感触は、柔らかくて熱い。  単純な感想かもしれないけれど、俺にとっては重要なことだった。 (マルクスの唇って、甘い……)  もしかしたら、幸福感から味覚がおかしくなっているのかもしれない。  なんて思いつつ、マルクスとどちらともなく唇を重ね合わせる。 「……口、開けて」  何度か唇を重ねていれば、マルクスが小さくそう告げてくる。  逆らう意味もなかったから、俺は言われた通りに唇を開いた。うっすらと開いた唇に、マルクスの舌が強引にねじ込まれる。 「んっ、ん」  先ほどよりも荒々しく、口腔内を舐め回される。  マルクスの舌は、これっぽっちも優しくない。乱暴で、荒くて、気遣いなんてちっともない。  でも、なんだろうか。  ……マルクスの余裕のなさが伝わってくるみたいで、少し嬉しい。 (……ってか、ちゃんと反応してるじゃん)  太ももに当たるソレは、確かに熱を持って硬くなっているのがわかった。  ……反応しないなんて、嘘じゃんか。 (それとも、キスしてる相手が、俺だから――?)  俺だから、反応してくれているのか。そうだったとしたら……うん、女々しいかもだけど、嬉しい。  無意識のうちに、そう思っていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加