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「……マルクス」
ようやく唇が離れて、若干歪んだ視界でマルクスの顔を見つめる。
歪んでいるのは、快感の所為で零れた涙の所為だった。
「ロドルフ。無理、我慢できそうにない」
マルクスが熱を帯びた声でそう囁いて、俺の身体に手を這わせる。
初めは薄手のシャツの上から、上半身を撫でられる。それがどんどん下に降りて、腰元に触れた。
「……反応した?」
ぴくんと身体を跳ねさせた俺を見て、マルクスが意地悪く唇の端を吊り上げて、そう問いかけてくる。
――反応なんて、してない!
と、言うには説得力が全くない。
だって、俺の陰茎は緩く勃ち上がってる。スラックスと下穿きを押し上げているのが、俺自身にもよくわかってしまった。
(キスして、身体を撫でられただけで……)
それを実感すると本当にいたたまれなくて、そっとマルクスから視線を逸らした。
瞬間、絡めた指を解かれて、一抹の寂しさが胸中に渦巻く。だから、俺は自ら腕をマルクスの背中に回した。
「……な、なぁ、もっと、触って……」
視界が涙でぐちゃぐちゃになっている。なのに、俺は強請ることを止められない。
俺の声は震えていて、理性なんてとっくに投げ捨てた声を、していた。
自分でも驚くほどに艶めかしい、色香を帯びた声。心臓がバクバクと大きな音を立てて、マルクスを求めている。
「お、おれ、マルクスだったら、大丈夫……だと、思う」
嘘だ。
本当はマルクスじゃないとダメだ。この男じゃないと……俺は、こんな風にはならない。
身体は反応しないし、触れてほしいなんて思いもしない。それだけは、容易に想像が出来る。
「ロドルフ……」
「我慢、しなくてもいいから」
もう片方の手を、マルクスの下肢に伸ばして、そこに触れる。
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