140人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ん、そっか」
俺の耳元で、マルクスがそう囁く。その声だけで、おかしくなりそうだった。
……俺、バカみたいにマルクスのことが好き……だった、らしい。
「じゃあ、こういうの、どうだ?」
マルクスがそう続ける。そして――俺の耳朶を、甘噛みした。
「ぁぅ、んっ!?」
身体が跳ねた。
「ぁ、あっ、や、やめ、それ、やだぁ……!」
マルクスの舌が、俺の耳の孔に入ってくる。そのままぴちゃぴちゃと音を立てて舐められて、身体中が途方もなく熱くなる。
至近距離で聞こえる水音は、俺の気持ちを淫靡にしていく。先ほどまで緩く勃ち上がっていた陰茎は、もう完全に勃ち上がっている。それは、俺にもよくわかる。
「やだ、じゃない。……感じてくれているんだろ?」
「ぁ」
マルクスの指が、俺の乳首に爪を立てる。
ぴりりとした快感が身体中を駆け巡って、はらりと涙が零れた。
「ひぅ、ぁ、も、むり、むりぃ……!」
なんだろうか。
俺の口から零れる声は、ひどく甘ったるくて、胸焼けしてしまいそうなほどだ。
ぶんぶんと首を横に振って、マルクスの愛撫から逃れようとする。でも、マルクスは俺の身体をしっかりと押さえつけている。
その所為で、逃げられない。俺は、ソファーの上で身体を跳ねさせることしか出来ない。
「ぁあっ! だ、だめ、だめ……!」
「ダメじゃない。……ここだって、ほら」
そう言ったマルクスが、俺の下肢に手を伸ばす。
スラックスの上から硬くなった陰茎に触れられて、もうどうしたらいいかがわからない。
「ここ、硬くなってる。……俺に触れられて、感じた?」
意地の悪い問いかけだと思った。
けど、答えなくちゃ。
その一心で、俺はこくこくと首を縦に振る。
「か、かんじた……」
今にも消え入りそうなほどに、小さな声だった。でも、熱を孕んだ、欲情のこもった声だ。
「マルクスに触られて……かんじ、た、からぁ……!」
こんなの、正気だったら口にすることも出来ない言葉だ。
だけど、今の俺は何処か満たされていて。たった一度の触れ合いでもいい。
……マルクスに抱いてほしかった。
最初のコメントを投稿しよう!