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俺の言葉を聞いたマルクスが、息を呑んだのがわかった。
「……ロドルフ」
マルクスが俺の名前を呼んで、唇にちゅっと音を立ててキスをしてくれる。
かと思えば、その手が俺の下肢に伸びていく。
「……脱がしても、いいか?」
そう問いかけられて、俺はほんの少し視線を彷徨わせた。
……でも、覚悟を決めよう。
「い、いい、よ……」
今にも消え入りそうなほどに小さな声でそう言えば、マルクスの手が俺のスラックスにかけられた。
自然とごくりと息を呑む。心臓が、バクバクと大きく音を鳴らしている。
「うわぁ、すご……」
俺のスラックスを脱がせたマルクスが、小さくそう呟いた。
「シミになってるな」
「……言うな!」
先走りが溢れ出て、下穿きにシミが出来ている。それくらい、俺にもよくわかっていた。
ただ、人に指摘されるのと自分で理解するのは、全然違う。あと、言葉にされるといたたまれなくてたまらない。
「だ、大体、俺ばっかり脱がされて……理不尽だ!」
そんなの、ただの言いがかりだった。
「お前も脱げ!」
マルクスの意識を、俺の身体から逸らしたくて。俺は、マルクスの上着に手をかけた。
騎士団のエンブレムが刺繍された上着は、割と重量があった。……こんなのを着ながら、あんなにも動いているのか。
「じゃあ、脱がせてくれ」
マルクスが、上着を脱ぎ捨ててそう囁いてくる。
……これ、なんなんだろうか。
心の奥底でそう思いつつ、俺は震える手でマルクスのシャツのボタンを外していく。
一つ。二つ。外すたびに、俺の心臓が大きく音を鳴らす。少しずつ露わになるマルクスの肌に、柄にもなく欲情している。
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