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「だからさ、なんでも、話せよ」
静かにそう告げれば、マルクスが手を組んでその上に顎を置いた。視線は下を向いており、やっぱりなにかがあったんだ。
もしかして、騎士団のほうでなにかあったんだろうか? それとも、恋愛関係だろうか?
(マルクス、本当にモテるからな……)
男女問わずマルクスのファンは多い。……恋愛未経験、交際経験ゼロの俺とは全然違う。自分で言っていて、惨めだけど。
「……ロドルフ」
「うん」
「俺が今からなにを言っても、驚かずに聞いてくれ。あと、笑わないでくれ」
「え、あ、あぁ」
笑うような要素があるんだろうか?
(驚かないでくれというのはともかく、笑う要素なんてあるのか……?)
俺は、大切な幼馴染の悩みを笑うつもりなんてない。けど、一度気を引き締めよう。
その一心で気を引き締めれば、マルクスが大きく息を吐いて、顔を上げた。
「――俺、童貞なんだ」
「……は?」
だけど、さすがにその相談は予想していなくて。俺は、間抜けな声を上げてしまうのだった。
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