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「……騎士団に新しく入ってきた後輩と、付き合うことになったんだ」
「……うん」
騎士団は女子禁制なので、相手は自然と男になる。
まぁ、俺から見てもマルクスはかっこいいし、魅力的だと思う。だから、その後輩の気持ちもわからなくはない。
「後輩と言っても、同い年だった」
「……うん」
その説明は必要なのだろうか?
そう思いつつも、話は遮らない。のんきにしていれば、マルクスはハッとして「勘違い、するな」と言う。
……勘違いって、なにを?
「あっちが強引に付き合ってほしいと言ってきただけで、俺があいつを好きだったことは……多分、ない」
「それはそれで最低だな」
ぽつりとそう言葉を零せば、マルクスはガシガシと頭を掻いた。
……なんか、余計なこと言ったような気もする。
(でも、実際最低だし……)
本気じゃないのに付き合うとか、俺じゃあ考えられないことだ。これが、非モテの発想なのかもしれないが。
「自分を好きじゃなくてもいい。一時期でも夢を見せてほしいと、言われた」
「……そっか」
けどまぁ、相手も了承済みの関係だったら問題ない。そこは他人が口を出すことじゃないだろう。そう、自分に言い聞かせた。
「で、だな。まぁ、それっぽい雰囲気になったんだよ」
いきなり話が飛躍した。
「というか、だったら童貞じゃないじゃん」
頬杖を突きつつそう言えば、マルクスはバンっとテーブルをたたく。うわ、びっくりした。そう思って身体を跳ねさせれば、マルクスがすぐに「悪い」と謝罪してくる。
こういうところが、マルクスが憎まれにくい要因なのだろう。自分の非をすぐに認められるのは、素晴らしいことだ。
「いや、童貞だ。……最後まで、出来なかったから」
「……そっか」
まぁ、うん。そういうときもあるよな。そう言ってやろうかと思ったが、マルクスの求めている言葉がこれじゃないことは容易に分かった。なので、マルクスの言葉の続きを待つ。
「俺は、男女問わず、誰であろうと抱けない気がするんだ」
「それ、俺じゃなくて専門の人に相談したら?」
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