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ついつい口を挟んでしまった。けど、実際そうじゃないか。こんなこと、俺が解決できることじゃない。範疇を超えている。
「ほら、今後のことを考えたら、一生の恥をかいてでも専門の人に相談するのがいいと思うんだ」
年齢を重ねると、余計に言いにくくなるかもだし……。
とかなんとか。マルクスを説得する言葉を探していれば、マルクスは「違う」とゆるゆると首を横に振った。
俺の言葉のなにが不満なんだ。
(俺、正しいこと言ってる気がするんだけど……)
正しくなくても、俺に相談するのは間違っている。俺には医学の心得もないし、そっち方面の知識も拙い。到底、マルクスの力にはなれそうにない。それだけは、正しいのに。
「……話には、まだ続きがあるんだ」
「……そうか」
どうやら早とちりしたらしい。
そう思いなおして、落ち着くようにと何度か深呼吸。よし、落ち着いた。
「で、続きってなんだ?」
二人そろってお茶を一口飲んで、二人そろってティーカップを戻す。かちゃりという音が部屋に響く中、俺は続きを促した。
……マルクスが、露骨に俺から視線を逸らす。
(もしかして、俺になにか関係がある……?)
俺、マルクスになにかしてしまったのか……?
思考回路を必死に動かして、考える。が、考えても考えても答えが出てこない。
「……そのとき、俺は気が付いた。……俺、気持ちをこじらせて童貞のままなんだって」
「うん?」
「俺、ロドルフが好きなんだって、あのときようやく気が付いた」
……うん? うん?
(え、今、マルクス、なんて言った……?)
聞き間違いじゃなかったら、俺の名前が出てきて、「好き」って言っていたような……。
「……ごめん、マルクス。もう一回言ってくれ」
申し訳なさそうな表情を浮かべて、俺はマルクスにもう一度言ってくれるように頼んだ。
聞き間違い、絶対に聞き間違いだ……。
「俺、ロドルフが好きだから、ロドルフじゃないと勃たないんだ」
その言葉を聞いて、俺は確かに思った。……聞くんじゃなかった、と。
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