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そして、言葉が生々しい。もっとほら、曖昧にするとか……。
(って、こいつにはそんなの無理だよな……)
マルクスは器用なほうじゃない。そこまで頭が回っていないのだろう。あと、今、純粋にこいつは焦っている。
「……そっか」
しかし、それ以外に返す言葉が思い浮かばない。何処か遠い目をしつつそう返事をすれば、マルクスが勢いよく立ち上がる。テーブルが少し動いて、ティーセットがぶつかり小さく音を鳴らした。
「い、いきなり立ち上がって、なに……?」
自分の頬が引きつっているのがわかった。なんていうか、このままだと危ないような――。
「――俺、ロドルフが好きだ」
はっきりとそう告げたマルクスが、俺の隣に移動してくる。そのままぐっと顔を近づけてくる。唇と唇が触れ合いそうなほどに近い距離。そこに、マルクスの端正な顔がある。
「俺、お前への気持ちを拗らせすぎて、童貞のままなんだ」
「いや、知らないんだけど!?」
そんなの俺に言わないでくれ――!
俺がそう言うよりも前に、マルクスの腕が伸びてきて、俺の腰に回された。俺の身体が自然とびくっと跳ねる。
マルクスはそれに気が付いているのか、はたまた気が付いていないのか。そこは定かじゃないけれど、俺の身体を抱き寄せた。
……俺とは全然違うたくましい胸だと思った。
「だから、ロドルフ。……責任取ってくれ」
マルクスの心臓の音が、聞こえてくるかのようだった。早い鼓動を聞いていると、俺の心臓の鼓動もリンクするみたいに早くなっているような気がする。
……これ、マルクスに聞こえてないよな?
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