47.不審者からジョブアップ!

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47.不審者からジョブアップ!

 正直、うちの国にしかない職業だから疑われるよね。聞いたことないだろうし、占いが国の職業になる認識もないのが普通だ。私だって他国に赴いて、宮廷漁師とか言われたら驚くもの。  漁師って港町の職業で、国が公認する意味がわからないというか。たぶん、そんな感覚だろうと推測した。しっかり肯定したことで、王女様は目を見開く。それから頬を赤く染めて、恥じらいながら小首を傾げた。両手を口の前で組む仕草が可愛い。 「あの……私とヘンリの未来を占ってもらえないかしら。対価はえっと、このダイヤで」 「占いますけれど、ダイヤは要りません。お釣りが出せませんから」  ふふっと笑って了承した。軽口のつもりが、王女様は慌ててブローチを示す。 「こちらでは? このくらいなら平気かしら」  首を横に振る私に焦り、今度は繊細な彫金がなされた指輪を外そうとする。本気で対価を払う気なのかな。だったら……。 「対価は私が決めていいですか? でしたら、引っ越しが終わって落ち着いた頃にお茶会をしませんか」 「お茶、会?」 「ええ、宰相様と私が結婚したらご近所ですもの。仲良くなりたいと思います」  占い師の顔で、上品さを装ってみる。彼女は考えた後、頭を少し下げた。一般的な礼に比べて半分程度、でも王族として考えたら最敬礼に近いかも。慌てて深々と返してしまった。 「では占いますので、こちらへ」  自室のように振る舞っているが、完全に他人様の屋敷の客間だ。侯爵夫人の部屋は、現在使えないからね。結婚まで、お預かりされた他所のお嬢様扱いだった。この辺の事情は、王女様の方が詳しいかも。  丸テーブルの椅子を勧め、目の前にケースを置いた。抱えて馬車に持ち込んだので、すぐ取り出せる位置にある。開いてカードの枚数を確認し、アテュを広げた。二十二枚を裏返し、王女様に混ぜてもらう。  ここで騎士ヘンリも呼んで触れて貰おうと思ったけれど、王女様に止められた。やっぱり未婚女性だけの部屋はマズいらしい。彼に変な容疑がかかると気の毒なので、そのまま占った。  街の占い師だと、恋愛関係の占いに相手の髪や持ち物を触れさせることがある。まあ、私の場合は「あれば確実性が高まる」程度なので、今回はやめた。未来や幸せを暗示するカードが並び、自然と口元が緩んだ。 「お幸せになれますよ。連れ戻されることはありません。ただ、お子様は少し遅いですね」 「遅い……」  繰り返した王女様に、明るい占い結果を付け足した。 「お子様は男の子、女の子、女の子、最後に男の子です」 「……っ! そんなことまでわかるのね。え、四人も?!」  驚いたのは、生まれる子の順番を口にしたから? でも途中で数えて四人という人数に目を見開いた。 「ええ、不確定の五人目が暗示されていますので……そこはお二人で決めてください」  うふふと笑う私に、王女様は自然な笑顔を浮かべた。幸せそうで、なぜか泣きそうで。満ち足りた感情を伝えてくる。不幸な結果が出なくてよかったわ。
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