86.三度目の結婚式を準備しなくちゃ

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86.三度目の結婚式を準備しなくちゃ

 ハンナの仕事復帰はかなり先になりそうなので、侯爵家の侍女に疑問をぶつけてみた。子作りって調整できるの? 口付けて唾液を飲んだら子が出来ると信じていたので、その辺の知識はかなり乏しい。  正直に申告したところ、侍女達は快く答えてくれた。曰く、調整可能らしい。何でも、子が出来やすい日とそうじゃない日があるとか。計算方法については教えてもらえなかったが、女性特有の日から算出できるらしい。  腹痛と冷えに苦しめられるあの日に、そんな意味があったなんて。驚きながら、この点はルーカス様に任せようと決めた。だって、私が計算しても間違えるだろうし。忘れてしまいそう。ルーカス様は上手に調整してくれるはず。 「ニュカネン子爵様がお見えです」 「あ! エルヴィ様ね。お茶の支度をお願いできるかしら」  温室に用意してくれるよう頼み、大急ぎで着替えた。さすがに元王女様相手のお茶会で、ワンピースはない。最低限の礼儀として、ガーデン用のドレスに着替えた。くるぶしが見える長さでスカートを調整しているのは、外でお茶会などに参加するためだ。こんなドレスを作るくらいなら、礼儀作法を変更してワンピース許可にすればいのに。  温室へ入り、着座していたエルヴィ様に遅れたお詫びをする。ご相談として、エルヴィ様の結婚式の話が出た。 「家族も親族も祖国も没落してしまったから」  笑いながらのセリフだけれど、めちゃくちゃ内容が重い。ご本人は覚悟の上だったから、特に気にしない様子だ。現在のアベニウス国の状況は知らないが、駆けつける身内は友人の元伯爵令嬢くらい。寂しくならないよう、こちらで盛り上げないと。 「先日のハンナさんの結婚式、とても素敵だったわ。領民と一緒で、私もあの結婚式をしたいの」 「だとしたら、ルーカス様に場所の提供をお願いして、街の人の取りまとめはパン屋のおかみさんでいいかな。顔が広い人だから」  パン屋は毎日、馴染みの客が来る。そのため告知などをお願いすると、あっという間に広めてもらえた。それにパン屋の売上の一部を孤児院に寄付している。人のいいおかみさんなのだ。 「あら、明日会うからお話ししておくわ」  エルヴィ様もすっかりこの生活に馴染んできた。下級貴族と王族では全然違うだろうに、平民の子ども達を可愛がり、ご近所と仲良く過ごしている。適応能力が高くて、優しい人なのだ。差別する意識がないから、皆と打ち解ける。元が平民と変わらない生活だった、貧乏子爵家の私も物おじしないで済んでいる。 「それと、たくさんの人を呼んで欲しいの」  お祝いはたくさん聞きたい。そう付け足され、当然のことと頷いた。私の知り合い……とりあえず片っ端から声をかけておこう。誰が顔を出せるか、早めに問い合わせないとね。  ドレスや宝飾品は、友人の元伯爵令嬢が持ち込む予定だから、こちらで準備は不要だ。靴……は本人が選んだ方がいいし。私は料理の手配でもしようかな。出来ることを考えるのは楽しくて、お茶会の後でルーカス様をつかまえて盛り上がった。
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