一番気に成る事

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一番気に成る事

 朝目が覚めると、恋人の寝顔がすぐそばにあった。  海人は、血のつながらない弟で、恋人でもある空知の寝顔を眺めた。 空知の左手は、枕と海人の首の間に入っていて、腕枕の形になっている。 右手は、毛布から飛び出た海人の肩を包み込むよう置かれている。 眠っている間も、空知に守られていたようだ。     海人は肌感で、自分が何も着ていないことに気づいていた。 隣に眠る空知の上半身も、何も着ていなかった。  昨夜、空知と致した、あれやこれやなどなど、さまざまを思い出して、一人顔を赤くする、こめかみがキュウっとして、耳まで熱くなった。  眠っている空知の顔を見て、そろそろと自分の左手を持ち上げる、そっと空知の頬に触れた。  空知の顔や、体に触れるとこを許されている…… それが心の底を、ホンワリと温かくする。  滑るような頬をたどった指を、赤い唇に滑らせる。 唇の柔らかさを確かめて、シャープな顎をたどる。 血管の浮き出た首筋をなぞって、サラサラとした鎖骨に触れた。 その先の胸を、触ろうかどうしようかと迷って、指を止めたまま、目線だけで、その先をたどる。  去年の夏まで、水泳部でバタフライを泳いでいた空知の胸板は厚い、胸筋は張りと弾力がある、むっちりとしてた胸筋も、触り心地が良さそうで、ゴクリと、唾を飲み込んだところで、空知の喉仏が、ぐりぐりと動いた。 「……あっ」 海人が声をあげると、我慢しきれなくなった空知が、いたずらっぽく右目だけを開けた。 「おっ、起きてたの! 」 海人は慌てて、空知から少し離れる 「海人が、いやらしい感じで触るから、起きちゃった」 「…… ごめ」 空知の人差し指が、話し出そうとした海人の唇に、シーと内緒話をするように触れて、謝罪の言葉を止める。 「もう、触ってくれないの? 」 空知は、海人を覗き込むように尋ねると、海人はフッと視線を外した。  海人は何も話さずに、もう一度左手を動かす。 「空知のおっぱい触りたかった」 海人が『おっぱい』と呼ぶ、その呼び方に、空知がグッとつまって、顔を赤くした。 「……何で? 」 空知は、子供が、大人に、何もかも訊ねる時のように、幼い口調で、海人に聞いた。  海人の指が動き出して、手のひらを開いて、海人の胸に触れる。 「色っぽいから…… 背中も触りたかった」 「……何で? 」  海人の手のひらが、空知の肩を包んで、少し冷えた肌を温めた 「カッコイイから…… 指もさわりたかった」 「……何で? 」  海人の手が、空知の右手を肩から辿って、肘の内側を撫でる 「絡めて繋いで」  海人のいたずらをしていた指を、空知が救い上げて繋いだ 「……何で? 」 「触っても、許されるの、確かめたかった」  海人はおでこを、空知のおでこに、こつんとぶつけた 「好きだ…… 空知」 「俺も好き、海人は、ズルい」 「どうして? 」 「可愛すぎる」 チュッと音を立ててキスをした 「おはよう海人」 「うん、おはよう」 「朝から、ムラムラしちゃった」 空知は、絡めたままの指先を、スリスリとさすった くすぐったいのか海人はクスクス笑っている。 「しょうがないじゃん、ずっとお預けだった恋人と、やっと恋人らしい時間をすごせるようになったんだ、触りまくりたいし、絡め合いたい」 空知は、少し、すねたような口調でそう言った。  空知は、海人の肩を押して、仰向けにさせると、覆いかぶさった。 「海人、イチャイチャしよ」 海人のうえにいるのに、空知は器用に覗き込む 「え? 朝ごはんは? 引っ越しの、片付けは? 」 そう言いながら、海人は、誘うように、流し目で空知を見る。 「イチャイチャし終わったらすればいい」 海人が、可愛くてたまらない空知は、海人の首筋に顔をうずめる 「イチャイチャ終わるの? 学校始まっちゃう」 海人は、言葉だけの抵抗を見せる 「学校始まってから、片付けをしてもいい」 空知は、海人の首筋にキスをしながら、耳の奥に囁く様に聞いた 「嫌? 」 うかがうように、見つめられる 「嫌じゃない…… 」 海人は、小さな声で言った 「ヤッタ」 空知は、海人の頬に可愛らしいキスをした。  掛けていた毛布を引っ張り上げて、海人をすっぽりと隠した。 二人の一日は、なかなか始まらない。
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