明るい朝は、トーストの匂い

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 俺、月島空知(つきしまそらち)の人生は変わった、まさに青天の霹靂?足元から鳥が立つ? 藪から棒? 雷の直撃?  そう、すごい衝撃とともに小学三年生の夏休み、父さんと俺だけだった家族に、久美(くみ)さんと、久美さんの息子(小学校三年生の)海人(かいと)が加わってくれることになった。  海人は優しいし、俺たちは気があって、一緒に居るのはとても楽しい。 一人で過ごしていた夏休みが、海人と一緒にいつでも遊べる夏休みになって、楽しくて仕方ない、夢中だった。  夏休みが終わって、俺たちは四人で、家族に成ることになった。 一緒に住み始めたので、海人は俺の小学校に転入してくることになった。  その日は、(さかえ)さん(俺の父さん)と久美さん(海人のお母さん)が一緒に学校に来た、俺だけ教室に行って、海人たちは職員室に向かった。    教室の中は、なんだかいつもよりざわざわしていた、夏休みに何があったか、どこに行ったかなどの声も聞こえたけど。  どこから聞きつけたのか、転校生がくるってはなしでもちきりだった。 クラスの女子が職員室で見かけたらしい。  始業時間が始まると、先生が海人を連れて入ってきた。  海人は、自己紹介をして…その時先生が言ったんだ「空知の兄ちゃん」…だって。    そして気づいた、生まれの早い方が兄ちゃんになって、俺と海人は兄弟になるんだって。 正直…驚いた。 その後、海人は俺の隣の席にやってきた、びっくりしてたけど、変な顔したくなくて、俺たちは声を出さずにニッと笑いあった。  休み時間になると、クラスの全員が海人のところにやってきて、何やら根ほり葉ほり聞きたがった。  海人が愛想よく返事しているから、その時間はそのままにしておいた。 でも、なんか面白くない…。  次の休み時間は、皆があつまってくるまえに、学校の案内をすると言って、海人を連れ出した 「大丈夫か?疲れてない?」 「うん、皆いい人みたいで良かった」 「あぁ、興味深々だな」 「へへ…勉強、教えてね。前の学校より、少し進んでるみたい」 「あっ…うん」 海人があんまり可愛い顔で笑うから、耳が熱くなった。    その日は半日だけの学校だから、海人と一緒に帰って、俺の教科書を見ながら、前の学校との進み具合の違いとか確認した。 「空知、学校で人気者だね」 「へ?何で?」 「うん、女の子たちなんて、空知の話ばっかり聞きたがったよ」 「は?なんだそれ」 そんな事今まで一度も言われたことないけど、きっと海人の気がひきたいからだよ、共通の話題ってやつだ。  海人はわかってないんだ、海人がさわやかな笑顔を何気なく振りまくから、みんな海人と友達になりたがってるんだよ。  なんだか、胸の真ん中がモヤッとして落ち着かない、俺はそこを服の上からギュッと握った。    俺はその日から、なんだかやたらと海人と一緒に居た、どこに行くにも声をかけて、海人と一緒に行動できるようにした。  だって、俺以外の誰かと、海人が笑いあっているのが嫌だったから…… 嫌というより、痛かった。  …… 俺、どうしちゃったんだろう、海人、海人、どうかそばに居て。  それから、十一月になって、栄さんと久美さんは正式に夫婦になった。
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