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ボイラーメーカー
「後藤さん、『ボイラーメーカー』出来ますか?」
後藤さんが手を拭きながら出てきた。
「名前で呼ぶなよ。マスターな?分かってるか?」
後藤さんはぼくの顔をまじまじと見て、続けた。
「うち、今クアーズ無いよ?契約終わっちゃって」
「ミラー、あるでしょ」
「まぁ、あるけど。バーボンはいつもの?」
後藤さんは、酒棚のオールド・クロウを眼で示した。
「よろしく」
「相変わらず物好きだねぇ。じゃ、今ショットグラス、新しいの出すから」
後藤さんはまた奥に引っ込んだ。
「あたし初めて見るかも」
ナナは興味津々だ。
「いい社会勉強になるね」
「何それ」
ぼくはカウンターに肘をついて、後藤さんを待った。すぐに後藤さんが片手にミラーが波々と入ったビアグラスを、もう片方の手に琥珀色の液体の入った少し大きめのショットグラスを持って奥から出てきた。
「お待たせ。榊くん、これやるの久しぶりだね、あれは……」
ぼくは後藤さんを眼で制止した。
「よし。じゃあ、行くぞ」
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