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紫外線の影響で、花の色が変わる事なんて全く知らなかった。
目の前の男性は、私の知らない知識をさらっと教えてくれる。
自分の知らない事を知っている男性...
私はそんな夫に対し、少し興味が湧いてきた。
「そう言えば、坂口さんはお名前が『登』さんですよね。登山にふさわしいお名前...」
「偶然なんです。両親は山登りをしませんから」
夫はそう言って笑った。
その控えめな笑顔は、あの時見せて貰った写真の笑顔と一緒だった。
その時、コーヒーとシフォンケーキが運ばれて来たので、
2人でケーキを食べた。
ネットの口コミ通り、とても美味しいケーキだった。
しかし私はケーキよりも、
目の前の、フォークを握る日に焼けた夫のゴツゴツした手が気になり、
ケーキに集中出来ずにいた。
喋り方や雰囲気は、ソフト過ぎる印象の夫だが、
その体系は、細身でありながらがっちりと逞しい。
そのギャップが妙に気になってしまう。
その日をきっかけに、私達は何度も会うようになった。
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