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1.僕は当て馬
「今までごめん弘樹……っ、俺、やっと本物の想いに気づいたんだよ……!」
「尚也……っ」
大粒の涙を流す青年を、尚也が苦しそうな表情で抱きしめる。
お互い幼馴染だったらしい二人は、距離が近すぎた故にすれ違い、とうとう関係が拗れたらしい。
けれど大学に上がり、距離が出来て初めてお互いの大切さに気づき始めた。
「はぁ? 信じらんないっ、この僕を振るなんて……絶対後悔するんだからねっ!」
そして、尚也が大学で告白されて恋人が出来た事で、弘樹と呼ばれた彼が苦しみ尚也への恋を自覚した。
同時に、尚也も恋人をつくってやっと、幼馴染への想いに気づいたのだろう。
尚也と恋人だった人物は怒って去り、二人は晴れて結ばれハッピーエンド。めでたしめでたし。
良かったね、みんな幸せ。
ほんと、僕以外は──
二人の間に入り込める余地もないほどの熱い抱擁を、悔しげに睨んで去っていく元恋人。つまり僕。
「やっと本物の想いに気づいた」んだってさ。つまり僕はニセモノ呼ばわりかよ。
はいはい、分かってたよ。こうなる事。
本物の愛、真実の愛には勝てないよね。
しょせん僕は、当て馬だから。
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