私はひとりか

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知らない人たちばかりで息がつまりそう。愛想笑いで顔が疲れた。せっかく話しかけられても緊張で上手く話せない。 婚約中の彼の、地元の友達の集まりに初めて参加した。みんな家族連れなので結構な人数だ。合計5家族で、子供たちが10人以上いる。 その中の1家族の家にお邪魔して、みんなが持ち寄ったおかずやらをあてに、男たちは酒を飲んでいる。女たちはそれぞれの子供の話や学校行事の話をしている。子供たちは各々楽しそうに遊んでいる。 私がもうちょっと自己肯定感が強くて明るい性格なら、もうちょっと打ち解けられたかもしれない。こんなに身の置き所がないのは久しぶりだ。 一緒に回る人がいない学校の文化祭、全く踊れない体育祭のダンス、前職の派手なノリの飲み会、カラオケを強要される友達の結婚式の二次会などなど…わりと経験してきたが、経験値は上がらない。 結婚したら私は地元を離れて、彼の地元へ引っ越す。彼は、誰も知人がいない所へ嫁ぐ私のことを心配していた。 「私、自分の地元にも友達いないよ。」と言ってしまおうかと思ったが、厄介な奴と婚約してしまったと思われるのが嫌で、言わなかった。 だから、この場で相談できるような人を作ってはどうか、というようなことを言っていた。 12月の夜の11時。今日は例年よりかなり冷えこむと今朝のニュースでやっていた。その通り、手はかじかみ、車の冷たいハンドルを握るのが辛い。助手席に乗った良い気分の彼は楽しそうだ。なんだかイライラしてしまう。 「どうだった?」 「……何が?」 「みんな良い人ばかりだから、何かあったら相談すると良いよ。」 「……うん」 彼は優しい。でも、今日のことで自信を失くした。 ろくに名前も覚えられなかった。誰とも連絡先を交換してない。話も弾まない、共通の話題もない相手と、交換したいと思わないだろう。 もし、彼に正直な気持ちを打ち明けたとしても、余計に気を使われてしまうか、面倒くさいと思われてしまうはずだ。それに、言ってスッキリするような性分ではない。 もうすぐ、彼と夫婦になる。 だからといって、孤独でなくなるわけではないことを思いしった。
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