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ジェノビア皇国
首都アルベール
〜ローズ侯爵邸〜
皇国の大貴族であるローズ侯爵には
たった1人しか子女がなく、
国中の貴族令息から婿探しをしていた
地位も名誉も富も手にした侯爵家と釣り合う家は限られ、釣り合ったとしてもこの国で1番美しい姫君とは称される侯爵令嬢の夫となる者の
人格も侯爵は妥協しなかった
「お父様」
黒く美しいストレートな髪をハーフアップに、緩く結い、まだ10代と若い彼女の絹のような肌に纏う薄桃色のドレス
黒曜石を埋めたような瞳
「ジュリア、どうしたんだ」
その父親であるローズ侯爵は
長身で、黒い髪に白髪が混じった中年の男性。気品と威厳を漂わせているが娘を見る眼差しは優しさが宿っている
「私は侯爵家の一人娘。つまり跡取りであり、爵位を継げない女の身に代わり、シェイラ公爵令嬢のように婚約者を婿にとらなければならないことは重々承知しております」
黒曜石のような瞳で真っ直ぐに父親を見据える
見つめたまま膝を折り、ドレスが汚れることも厭わず跪いた
「ジュリア?立ちなさい」
驚きのあまり手を差し伸べる侯爵
「ご紹介したい殿方がいらっしゃるのです」
ありとあらゆる娘に相応しい貴族の令息たちを血眼になって探していた侯爵は信じがたい事実に戸惑い返事をするのに少し時間がかかったが
平成を装い
「わ、分かった。すぐ連れてきなさい。
今夜の晩餐か明日にでも」
内心動揺しているのを娘に悟られないよう
部屋を後にしようとする侯爵
「あ、お父様、もういらっしゃっておりますの」
「なにっ!?」
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