トンチキ営業

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「分かりました、でもあらかじめお伝えしておきますと私が該当するしないに関わらずそちらのご期待には沿えないと思います」  これは言葉のままだ、貯蓄残高無の人間に内容はなんであれ不動産関係の契約などが結べるはずがない。  Aが仮にちゃんとした不動産の営業だったとして、ノルマに追われ一縷の望みにかけて私の部屋を訪れたのならそれは気の毒としか言いようがない。  さっさと私など切って、次の客に行くべきだ。  端的に言えば、『早く帰れ』という言葉を私なりにオブラートに包んでつたえたつもりだった。 「それは内容がなんであれ、お話をするつもりがないという事ですか?」 「まあ、そうなりますかね」 「えっと、ちなみにどうして給与明細を見せる前に取組みの内容を話してくれっておっしゃったんですか?」  逆になぜそんなフワッとした内容の話に、そこまで情報を与えると思ったのか。  ちなみにだが原因はこの男だけではない、過去に訪れ私の時間を奪っていった者たちとの経験から前述の通り私はなるべく個人情報を渡したくないと考えていた。 「失礼ですが、正直に言って突然来た見ず知らずの方に個人情報などを話すのが怖いんですよ。過去にもそういった方がいましたから」 「そういう方、とういうと?」 「いらない物を売ろうとしたり、宗教の勧誘だったりとかですね」 「つまり私に対して警戒心があったという事ですかね?」  ああ、そうだよ。その通りだよ。  まさか自分が胡散臭くないとでも思っているのだろうか、アポなしかつ十八時という時間の訪問。  更には話の内容もぼかしまくると来たもんだ、警戒されて当然ではないだろうか。  私の言葉を聞いたAは、ふぅと小さくため息を吐いた。 「私はそういった宗教関係などの人間ではありませんよ」  それはまあ分かるが、問題はそこではない。
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